2011 Fiscal Year Annual Research Report
大規模災害事例に基づく災害看護学の実践的知識の開発
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21592725
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Research Institution | Japanese Red Cross College of Nursing |
Principal Investigator |
川原 由佳里 日本赤十字看護大学, 看護学部, 准教授 (70308287)
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Keywords | 災害看護 / 基礎看護 / 歴史研究 / 災害史 |
Research Abstract |
本研究の目的は、近代以降の日本の大規模災害における医療実践事例を歴史的研究手法により掘り起こし、現代の災害医療の論点とリンクさせることにより、国内外の災害看護に活用できる実践的知識を開発することであった。最終年度である平成23年度は、三陸海嘯(明治29年)・関東大震災(大正12年)における災害医療と看護に関する調査を行い、災害医療における普遍的な課題群と活動の基本となる考えについて検討した。 歴史研究から明らかになった災害医療の普遍的な課題群は、(1)医療提供に関して、情報の入手、行動の自由、適切な場や建物の選択、医療材料、人員の確保、現地医療者への協力、(2)効率的で継続的な医療の提供に関して、リーダーシップの所在の確認、重傷者の後送を含むシステムづくり(医療者の相互連携を含む)、住民への指導、費用の確保、(3)現地医療の復興に関して、現地医療や住民の意見を取り入れるシステムづくりと自立支援であった。またこれらの災害で活躍した人々の行動原則となっていたのは、(1)準備性(人員材料の準備・訓練を含む)、(2)迅速性(初動体制を含む)、(3)指揮系統の明確性、(4)専門性(災害の特殊性に応じた医療の提供)であり、(5)現地医療を中心とした支援であった。 折しも平成23年3月には東日本大震災が発生した。日本災害看護学会、日本赤十字看護学会の主催する学術集会やセミナーで、東日本大震災における災害医療の実態や課題について情報収集し、専門家と意見交換することができた。過去100年のうちに、医療技術は大きく進歩したが、過去、災害において課題となったことの多くが、今回の東日本大震災においても依然課題となっている事実が確認でき、研究の成果に基づく災害医療・看護の発展が必要であることが改めて確認された。
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