2010 Fiscal Year Annual Research Report
頻回な自傷行為を呈する思春期患者の感情統制ストラテジーに関する研究
Project/Area Number |
21592932
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
郷良 淳子 大阪府立大学, 看護学部, 准教授 (40295762)
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Keywords | 自傷行為 / 思春期 / 看護 / エキスパート / 日米 |
Research Abstract |
本年度は、思春期患者の自傷行為ケアのエキスパート看護師の看護の経験を明らかにすること、そこから効果的なケアプログラムの骨子を明らかにすることを目的とする研究を行った。思春期の自傷行為のケアの先駆的実践を行っている米国の2施設の看護師11名と日本の同等の看護師9名に半構成個別面接によりデータを収集し、M-GTAにより分析を行った。また分析の際にNVivo8を用いた。倫理的配慮として、この研究で知り得た情報は研究目的以外には一切利用しないこと、個人が特定されないよう配慮すること、プライバシーを厳守すること、途中でインタビューを自由に中止できる権利を書面、口頭にて説明し同意を得た。また、米国では研究協力者の所属する2施設の倫理委員会、日本では研究者の所属する施設の倫理委員会の承認を得た。 日米の研究協力者とも、うつに起因する自傷行為か注目を引くための自傷行為かを判断することの重要性を認識していた。うつに起因する自傷行為の場合には、話を聴くことが患者の感情統制を助ける基本となるケアとしてあげられた。注目を引くための自傷行為と判断した場合、気持ちを聴くケアは最小限にすることが意識されていた。まだ日本においては解離を伴う自傷行為ケアへの苦悩があった。米国では弁証法的行動療法をベースにした感情統制スキルの獲得を看護実践の中心においていた。日本ではこのようなケアの指針がなく手探りで行っていたが、患者自身が感情を統制できることに焦点をあてたケア実践を行っていたことは共通していた。ケアの指針がない日本では、個々の看護師のスキルによってケアの効果が大きく異なる現状が浮かび上がった。そのため、日本においても、うつに起因する自傷行為のケアの全体的な質の向上には、弁証法的行動療法をベースにした感情統制のスキル獲得を可能にするプログラムをケアに組み込むごとの有効性が示唆された。
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