2011 Fiscal Year Annual Research Report
頻回な自傷行為を呈する思春期患者の感情統制ストラテジーに関する研究
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21592932
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Research Institution | Konan Women's University |
Principal Investigator |
郷良 淳子 甲南女子大学, 看護リハビリテーション学部, 客員研究員 (40295762)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津村 智惠子 甲南女子大学, 看護リハビリテーション学部, 教授 (40264824)
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Keywords | 自傷行為 / 思春期 / 感情統制 / 弁証法的行動療法 |
Research Abstract |
今年度の研究目的は、自傷行為を繰り返す思春期患者の体験の意味と自傷行為を防ぐ効果的な感情統制プログラム内容を明らかにすることであった。自傷行為の体験は、外来治療中の女性5名(18歳~42歳)との半構成個別面接でデータを収集し質的帰納的分析を行った。彼らは学校や職場でのいじめを経験しそれにより自己肯定感を喪失していた。しかし治療や看護によって家族や医療者から見捨てられない感覚を持てることにより、自傷行為をコントロールできるようになっていった。また、そこには自傷に至るまでの気の紛らわす方法の獲得が必要であった。効果的な感情統制プログラムは、16歳~20歳までの女性4名の通院患者に対し弁証法的行動療法(DBT)のスキル獲得の要素を取り入れた1-2週に1回の面接であった。全員が壮絶ないじめや親しい人の暴力という心の傷を身体の痛みに置換する意味で自傷行為を行っていた。また自己肯定感の低さから「価値のない自分」は傷つこうとも仕方がないという思いが自傷行為を繰り返すことにつながっていた。 自傷行為は、生活体験のストレスに影響され数量的には変動があるが、面接で練習した気をそらすスキルや対人関係のスキルを実生活で取り組めた際に自傷行為をコントロールできていた。またそのコントロール感覚が自己肯定感につながっていた。しかしスキル獲得は、自己コントロール感の獲得という肯定的な側面と自傷からの回復により家族や医療者が離れていくかもしれないという、過去の外傷体験の「見捨てられ感」の再現の側面があった。つまり研究協力者は感情統制のためのスキル獲得の中で新たな葛藤との闘いを強いられた。この葛藤の克服には、家族や医療者も葛藤しつつ彼らから離れず共にいるという思いの開示とそれを研究協力者が実感できることが必要であった。 なお本研究は、研究者の所属機関及び研究協力者が治療を受ける機関の倫理委員会で承認された。
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