2010 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄後角第I層細胞における後根誘起シナプス応答の解明
Project/Area Number |
21600005
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Research Institution | Kumamoto Health Science University |
Principal Investigator |
吉村 恵 熊本保健科学大学, 大学院・保健科学研究科, 教授 (10140641)
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Keywords | 脊髄スライス / 投射ニューロン / slow EPSC / サブスタンスP / 痛覚 |
Research Abstract |
末梢から感覚情報を伝える感覚神経のうち無髄のC線維は、多くの種類のペプチドを含み、刺激によって脊髄後角に放出されることが示されている。しかし、その機能的な意義については未だ明らかではない。そこで、ラット脊髄スライスに後根を付した標本を作製し、後根誘起のシナプス応答の解析を行い、緩徐シナプス応答におけるペプチドの関与を明らかにする。緩徐シナプス応答は痛みの伝達にたいして修飾作用を示すと考えられており、ペプチドが痛み情報の伝達に作用を及ぼすかを明らかにすることは、今後の慢性疼痛の治療薬の開発に大きく貢献出来る。脊髄後角第II層の膠様質細胞には多くのC線維入力を受けているが、いずれの細胞もサブスタンスPやCGRPに対しては何ら作用を示さなかった。そこで、C線維が直接入力する脊髄後角第I層細胞から記録を行った。第I層ニューロンはは投射ニューロンと介在ニューロンが混在し、投射ニューロンの多くがC線維からの直接入力を受けている。第I層の細胞からパッチクランプ記録を行い、後根のC線維を頻回刺激した。刺激によって経過の速いfast EPSCが見られ、それに続いてslow EPSCが観察された。また、サブスタンスPを直接記録細胞に投与すると緩徐な内向き電流が惹起された。これらの緩徐応答はサブスタンスP受容体の拮抗薬によって抑制された。以上の結果から、脊髄後角第I層細胞はサブスタンスP含有のC線維の入力を受けていること、緩徐なシナプス応答が誘起されることが明らかとなった。今後、CGRPの作用についても明らかにしたい。また、鎮痛薬としての役割についても検討を加えたい。
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