2009 Fiscal Year Annual Research Report
美術を通してアフリカはどう語られているか―ビエンナーレと美術館の力学の研究
Project/Area Number |
21601009
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
川口 幸也 National Museum of Ethnology, 文化資源研究センター, 准教授 (30370141)
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Keywords | アフリカ / 同時代美術 / 表象 / 展示 / 美術館 / ビエンナーレ |
Research Abstract |
まず、2009年に行われた第53回ヴェネツィア・ビエンナーレで、アフリカのアーテイストがどう展示されているかを実地調査した。同ビエンナーレは、現代美術のビエンナーレとして世界で最も古い歴史をもち、最高の格式を誇っているが、1990年代以降は、アジア諸国の積極的な参加もあって地域的に多様化している。アフリカからの参加も今では珍しくなくなっており、今年は国別部門でガボンが参加していた。一方、統括キュレーター、ダニエル・バーンボームの企画による企画展「世界を構築する」の部門では、アフリカのアーティストとしてはジョルジュ・アデァグボ(ベナン)、パスカル・マルティーヌ・タユ(カメルーン)b、モセカ・(南アフリカ)の3人が招かれていた。このところのヴェネツィアでは、アフリカのアーテイストは、例年3人前後ということが多く、ひとつの基準枠になっている感がある。このうち、アデァグボとタユは二度目の参加であり、アフリカ人アーテイストへの幅広い目配という点でやや疑問が残る選択であった。こうした現象の背景には、ヨーロッパのアートワールドにおける、アフリカに対する全般的な関心の低下があるものと思われる。こうしたヴェニスでのアフリカの存在感の変化が、いわゆる世界のアートワールドに今後どのような影を落としいていくことになるのか、注目される。またイタリア、イギリス、フランスでアフリカ美術の展示を調査し、一方、北アフリカ、イスラム圏のモロッコでは、そもそも美術がどう認識されているかを調べた。さらに、セネガルのダカールで、ダカール・ビエンナーレがどのように準備されているかも調べた。加えて、ポーランドのアウシュビッツを訪ねて、過去の歴史的トラウマの記憶が展示を通してどう語られているかについても調査を行った。このほか、国内では、過去の文献によって、1990年以後、ヴェネツィア・ビエンナーレでアフリカの美術がどのように採り上げられてきたかを調査した。
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