2009 Fiscal Year Annual Research Report
ポリコーム群による胚性幹細胞および組織幹細胞のエピジェネティックな制御
Project/Area Number |
21602006
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
遠藤 充浩 The Institute of Physical and Chemical Research, 免疫器官形成研究グループ, 研究員 (40391883)
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Keywords | 幹細胞 / 発生 / 分化 / エピジェネティクス / クロマチン / 転写制御 / ポリコーム / ヒストン修飾 |
Research Abstract |
ポリコーム群は発生制御遺伝子の転写抑制に寄与するクロマチン制御因子であり、胚性幹(ES)細胞の未分化性維持に必須であることを申請者はすでに報告している。ポリコーム群遺伝子産物は少なくとも2種類の複合体PRC1-PRC2を形成し、それぞれヒストンH2Aのユビキチン化(uH2A)修飾・ヒストンH3の27番目のリジン残基のトリメチル化(H3K27me3)修飾の活性を持つ。本研究では、胚性幹(ES)細胞制御におけるこれら2種類の複合体の関係-役割の解明を目指した。従来の仮説では、PRC1の標的遺伝子への結合はPRC2に依存しているとされる。しかし本研究では、PRC2欠損ES細胞においても、標的遺伝子におけるuH2Aレベルがかなり残っていることを明らかにした。さらに、PRC1の標的遺伝子への結合メカニズムには、PRC2依存性、および非依存性の2つの経路があることを明らかにした。具体的には、PRC2依存性経路の実体は、Cbx2(PRC1の構成因子の一つ)によるH3K27me3への結合に依るものであった。一方、そのPRC2経路とは別に、PRC1自身もその酵素活性を介してクロマチンへ結合する仕組みを内包することが分かった。これらの成果は、これまで不明瞭であったポリコーム群の作用メカニズムを明らかにしており、ポリコーム群が2種類の複合体で機能することの生物学的な意義をも示唆している。すなわち、2種類の経路の総和とすることにより、発生過程の様々な変化に対応できるよう、抑制の程度に幅をもたせる仕組みになっていると解釈できる。 本研究ではさらに、栄養幹(TS)細胞の分化制御にもポリコーム群が関与することを見出した。興味深いことに、ポリコーム群Ring1BはTS細胞が未分化状態を脱するのに必要で、未分化性維持に必須の転写因子群Cdx2,Eomes,Sox2の発現を、分化時に抑制する役割を持つことが分かった。これらの知見は胚胎内と胚対外ではエピジェネティックな遺伝子発現制御の仕組みが異なることを示しており、現在Cdx2,Eomes等の転写因子とポリコーム群の拮抗的な関係の解明に焦点を絞って研究を進めている。
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Research Products
(6 results)