2010 Fiscal Year Annual Research Report
ポリコーム群による胚性幹細胞および組織幹細胞のエピジェネティックな制御
Project/Area Number |
21602006
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
遠藤 充浩 独立行政法人理化学研究所, 免疫器官形成研究グループ, 研究員 (40391883)
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Keywords | 胚性幹細胞 / ES細胞 / ポリコーム / ユビキチン化ヒストンH2A / ヒストン修飾 / クロマチン / 転写抑制 / 細胞分化 |
Research Abstract |
我々はポリコーム群Ring1Bが分化制御遺伝子の抑制を介して、胚性幹(ES)細胞の未分化性維持に寄与することを報告してきた。Ring1BはヒストンH2Aのユビキチンライゲースであることが分かっているが、H2Aのユビキチン化がRing1Bによる転写抑制活性に必要なのか、必要な場合どの様に作用しているのかについては未だ良く分かっていない。そこで本研究では、ES細胞におけるH2Aユビキチン化の局在および役割の解明を目指した。 ChIP onc hip解析を行った結果、ES細胞においてユビキチン化H2AはPRC1ポリコーム群の中心的な標的遺伝子のプロモーター領域に存在していることが分かった。一般にPRC1ポリコームの活性はPRC2ポリコームの活性に依存していると考えられている。しかしながら、PRC2欠損ES細胞においても、標的遺伝子領域上でユビキチン化H2Aがかなりのレベルで残存していることが分かった。 次に、野生型Ring1Bあるいは酵素活性を持たない点変異Ring1Bの導入により、RingWB欠損ES細胞の未分化性がレスキューされるかどうかを調べた。変異Ring1Bは野生型Ring1Bと同様にPRC1複合体を形成し、標的遺伝子へ結合し、さらには標的クロマチンの凝集も引き起こすことが出来るにも関わらず、標的遺伝子の転写を効果的に抑制することが出来ず、ES細胞の未分化性もレスキュー出来ないことが分かった。以上より、PRC1ポリコームによる分化遺伝子の転写抑制は、標的クロマチンの凝集とH2Aユビキチン化の両方のメカニズムの総和によって実現されており、H2Aユビキチン化は必ずしもPRC2活性に依存していないと考えられる。これらの知見は幹細胞形質の維持にヒストン修飾が重要な役割を担っていることを示している点で重要である。
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