2009 Fiscal Year Annual Research Report
幼児期の脳内ストレス処理回路の発達と成熟に内臓知覚過敏が及ぼす影響
Project/Area Number |
21610003
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡辺 諭史 Tohoku University, 大学院・医学系研究科, 非常勤講師 (40431506)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金澤 素 東北大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (70323003)
福土 審 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (80199249)
|
Keywords | 内臓知覚過敏 / 機能性腹痛 / 情動制御 / ストレス / 養育態度 / 過敏性腸症候群 / 事象関連電位 / 聴覚誘発電位 |
Research Abstract |
平成21年度は、情動ストレス制御が未発達である幼児期における脳内ストレス処理回路の機能に内臓知覚過敏の有無が及ぼす影響を明らかにするため、まず以下の仮説を検証した。 《仮説》7歳時点で内臓知覚過敏(機能性腹痛)の既往歴を有する子どもは、これを有さない子どもに比べて、 (1)情動コンフリクト(Go/Nogo)刺激を呈示されたときに誘発される抑制・エラー関連電位の反応性が高い。 (2)聴覚刺激時に誘発される大脳誘発電位の反応性が高い。 対象は、東北コホート調査に登録された生後84か月の児童-母親ペアのうち神経生理学検査に参加した97組であった。対象児97名に国際10-20法を用いて脳波電極を装着し、75dBの聴覚刺激時の聴覚誘発電位とGo/Nogo課題中の事象関連電位を測定した。同時に母親からChildren Somatization Inventory(CSI)ならびにParental Bonding Instrument(PBI)についての評価を聴取した。CSIは子供の身体症状、PBIは両親養育態度を定量化するものである。CSI腹部症状関連項目合計得点の高い群を機能性腹痛群、低い群を対照群とし、群間比較を行うとともに、PBI得点との相関分析を行った。 聴覚誘発電位では、潜時0-10msecの明瞭なABR(I~V波)が得られた。機能性腹痛群は対照群に比べてV波の潜時が有意に短かった。CSI腹部症状関連項目合計得点と母親の養育態度のケア因子得点との間に有意な負の相関がみられた(r=-0.235 p<0.05)。事象関連電位では、潜時200-400msecのN2電位が得られた。機能性腹痛群は対照群に比べてNogo刺激時のN2電位の振幅が有意に大きかった。 機能性腹痛症状を持つ児童では、聴覚刺激に対する脳幹反応が感作されているという仮説(2)および情動コンフリクト刺激に対する前頭葉機能が亢進しているという仮説(1)が部分的に支持された。次年度以降、対象者を拡大してこれらの仮説をより詳細に検証していく必要がある。
|
Research Products
(8 results)