2011 Fiscal Year Annual Research Report
「いえ」型保育所における「きょうだい保育」の実践的・実証的研究
Project/Area Number |
21610008
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
櫻井 康宏 福井大学, 工学研究科, 教授 (40020234)
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Keywords | 社会福祉関係 / 都市計画・建築計画 / 人間生活環境 / 保育 / 行動観察調査 / 動線 / 保育室内調理員常駐実験 / 子ども |
Research Abstract |
本研究は、「縦割り保育(1~5歳児混合保育)」「保育室における食事作り」というソフトの仕掛けと「いえ型保育空間」というハードの仕掛けを導入して「きょうだい保育」を実践する全国初の保育園(K園)において、子ども・職員がどのように生活を送っているのかを把握し、新たな仕掛けを検証する事を目的としている。K園では各保育室に食事作りのできるハード環境を整えつつも、経済的事情により、既存の職員体制では1日を通しての調理員滞在及び調理実施が困難であった。そのため、本研究経費で新たに調理員を雇用して保育室内での調理員滞在実験を行うこと=新たな仕掛け(6ヵ月間、対象保育室1クラス内での「副菜」「汁類」調理及び調理員の保育への参加)を試みた。この間、実験クラス及び実験対象外の1クラスにおける、比較分析のための行動観察調査を実施した。 ◆平成23年度の具体的な研究実績は以下の通りである。 (1)4~6月:論文執筆及び調査分析の継続 (2)7~9月:国際会議、学会等での研究発表 (3)10~12月:調査分析の継続、研究の総括 (4)1~2月:論文執筆 (5)3月:共同研究者間での研究・調査結果の報告及び今後の方針について打ち合わせ 調理員常駐実験による子どもの集団形成や居場所は、実験半年後>実験開始直後>実験1年前の順に「寝室」「食堂」利用が高く、異年齢集団形成割合も多かったが、実験対象外のKsクラスとの比較から、1月と6月の保育方法の違いによる5歳児の午睡の有無に起因すると考えられる。しかし、活動の合間に台所へ立ち寄る子どもの増加や調理員を含めた集団は、「3か月後」を境に増加しており、個人追跡調査から調理員との関わり方に個人差が認められた。また、調理員自身の行動も食堂・台所を拠点に徐々に「居間」、「寝室」へと広がり、「居間」「寝室」間の移動の増加や遊び時間での集団参加も見られるようになった。子どもの行動例をみると、活動日によって行動パターンは異なるものの、常に台所で作業を行う調理員のもとへ、子ども個人が自分のタイミングで向かう場面が多くみられるようになった。アンケート調査、ワークショップでは、保育士から、調理員常駐による調理時の保育室内の匂い、音、暖かさなどが、子どもに安心感を与え、生きる力をはぐくむだけでなく、職員の安心やストレス軽減にもつながるなど、肯定的意見が多く出された。
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