Research Abstract |
本研究では,そのタイトルの通り,「アルゴリズム的グラフマイナー理論」の研究を行っている.グラフマイナー理論は,グラフアルゴリズムの設計において非常に強力なツールとなり得る可能性が長年指摘されてきたが,グラフマイナー理論は極めて難解であるため,着手すらされていない状況が続いてきた.実際,500ページのも及ぶ膨大な証明は,離散数学を含め,多くの数学的知識が必要となってくるため,現在のところ,全世界で10人程度の専門家のみの貢献によって発展した理論である.また,この数学的に難解な理論のアルゴリズム的応用は,2005年までは全くなされてこなかった. 申請者は,海外のグラフアルゴリズム研究者とともに「アルゴリズム的グラフマイナー」プログラムを立ち上げ,その中心的人物としてプログラムを遂行中である.このプログラムは,マイナー操作に関して閉じているグラフに対する高速アルゴリズムの統一的な開発を目指す世界規模のプロジェクトであり,その動向は全世界の研究者の注目を集めている.そのいくつかの結果は,例えばSODA'09・'10,STOC'09などで発表されており,特に点素パスの研究分野から既に大きな反響を得ている.このプログラムは,純粋数学,理論計算機科学を巻き込む大きな流れを形成するプロジェクトとして当該分野の画期となり得るものであり,長期にわたってアルゴリズム分野に大きな影響を与える理論形成が期待されている.現在発展途上の理論であり,今後5年間は継続研究を行う予定である.
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