2009 Fiscal Year Annual Research Report
視覚的注意機能の多様性とその遺伝的、社会文化的基盤の解明
Project/Area Number |
21650056
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
齋木 潤 Kyoto University, 人間・環境学研究科, 教授 (60283470)
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Keywords | 視覚的注意 / 遺伝子多型 / 文化 / 多様性 / 認知神経遺伝学 |
Research Abstract |
今年度、視覚的注意に関する行動指標と遺伝子多型の相関を検討するための実験を行ない80名のデータを収集した。視覚的注意課題としては、先行研究で用いられていた空間手掛かり課題の代わりに、空間手掛かり課題、時間手掛かり課題、刺激反応適合性課題を融合したAttention network test課題を用い、さらに、これらPosnerによる注意の基本的下位機能と他の視覚認知課題の関連を調べるために、視覚探索課題(ポップアウト、結合探索課題、及び文化比較実験との対比のための線分長探索課題)、シーン認識課題、Crowding課題を実施した。これら一連の課題と並行して協力者からDNAサンプルを採取し、CHRNA4の遺伝子型を同定した。まず、行動課題間の相関構造を検討するため探索的因子分析を行なったところ、Attention network testと視覚探索課題の間には関連が見出されたが、Crowding課題、シーン認識課題はほとんど相関がなく、独立の能力を測定している可能性が示唆された。また、視覚探索課題の行動指標のうち、Attention network testでは説明できないものがあり、注意機能をPosnerの3つの下位機能で説明できるか疑問が残った。さらに、日本人のサンプルでは、欧米人のサンプルでは独立であったalertingとorientingの要因の間に有意な相関が見出された。この点は、注意機能の文化による効果を反映している可能性がある。遺伝子多型と行動指標の関係については、2つの重要な結果が得られた。1つは、orientingと多型の相関が見られたが、その関係が欧米人のサンプルの先行研究とは逆であったことである。もう一つは、従来報告のない、シーン認識課題の成績と遺伝子多型との間に有意な相関が見出された。
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