2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21650078
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
仲嶋 一範 Keio University, 医学部, 教授 (90280734)
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Keywords | 発生・分化 / 神経科学 / 脳・神経 / 細胞移動 / 大脳皮質 |
Research Abstract |
我々は、ニワトリ胎仔の大脳基底核原基(大脳皮質抑制性神経細胞の起源)の細胞を特異的に赤色蛍光タンパク質(mCherry)でラベルし、マウス胎仔の大脳基底核原基に子宮内で移植してその後の挙動を調べてみた。その結果、驚くべきことにニワトリ細胞はマウス大脳内において高い移動能を有し、大脳皮質内に問題なく進入できた。しかも、マウス大脳皮質内においてニワトリ細胞はマウス細胞同様に脳室下帯を限局して移動していたことから、この経路選択についてはニワトリ細胞もマウス細胞と同様の内在的機構を有しているものと推測された。一方、脳室下帯から皮質板に向けての方向転換については、マウス細胞にのみ見られ、ニワトリ細胞では殆ど認められなかった。そこで次に、より定量的かつ厳密な解析を行うため、mCherryを発現させたニワトリの基底核原基細胞と、GFPを発現させたマウス基底核原基細胞を混ぜて、同時に子宮内マウス胎仔の基底核原基に移植した。そして、それらのその後の大脳皮質内各層における分布を定量して統計解析した。その結果、脳室下帯付近にとどまっているニワトリ細胞はマウス細胞のそれらよりも有意に多く、逆に皮質板内に分布しているニワトリ細胞はマウス細胞よりも有意に少ないことが確かめられた。また、大脳新皮質より内側に位置する海馬においてはニワトリ細胞の方がマウス細胞よりも有意に多く分布していたため、上記ニワトリ細胞の移動異常は単にニワトリ細胞の移動能がマウス細胞よりも低いためではなく、マウス細胞に備わっている「移動方向の制御機構」がニワトリ細胞で欠損しているためであることが示唆された。
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