2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21650078
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
仲嶋 一範 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (90280734)
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Keywords | 発生・分化 / 神経科学 / 脳・神経 / 細胞移動 / 大脳皮質 |
Research Abstract |
今年度は、昨年度のニワトリ胎仔を用いた解析に引き続き、さらにマーモセット及びカメを用いた解析を行った。すなわち、マーモセットまたはカメ胎仔の大脳基底核原基(大脳皮質抑制性神経細胞の起源)の細胞を特異的に赤色蛍光タンパク質(mCherry)でラベルし、GFPを発現させたマウス基底核原基細胞と混ぜて、子宮内マウス胎仔の大脳基底核原基に移植した。そして、それらのその後の大脳皮質内における分布を形態学的に定量して統計解析した。その結果、いずれもマウス大脳内において高い移動能を有し、大脳皮質内に問題なく進入できた。しかも、マウス大脳皮質内において、ニワトリ細胞やマウス細胞と同様に脳室下帯を限局して移動していたことから、この経路選択については、調べたすべての種において同様の内在的機構を有しているものと考えられた。一方、大脳新皮質の脳室下帯から皮質板に向けての方向転換(「離陸」)については、マウス細胞とマーモセット細胞にのみ見られ、カメ細胞についてはニワトリ細胞と同様に殆ど認められなかった。さらに、ニワトリの基底核原基細胞のマウス基底核原基への移植後の挙動について、抑制性神経細胞のサブポピュレーションによる違いや、神経細胞としての誕生時期の違いによって結果に差がないか検討したが、明らかな差は認められなかった。また、ニワトリ細胞を直接マウス胎仔大脳新皮質の皮質板に脳表面側から移植したところ、少なくとも数週間にわたって生存し、見事に分化成熟することを見いだした。以上の結果から、大脳新皮質の脳室下帯から皮質板への移動神経細胞の「離陸」機構については、哺乳類に共通かつ特有の機構が存在している可能性が示唆された。
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