2010 Fiscal Year Annual Research Report
生きた単一の幹細部の内部と表面の情報を得るチップ増強ラマン散乱計測法の構築
Project/Area Number |
21650104
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
山本 貞明 電気通信大学, 燃料電池イノベーション研究センター, 特任教授 (20374720)
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Keywords | 細胞培養基材 / 細胞・組織 / 走査プローブ顕微鏡 / 移植・再生医療 / 表面・界面物性 |
Research Abstract |
1.チップ増強ラマン散乱スペクトル測定:ラマン散乱が増強されるチップ表面作製検討(チップ形状、チップ表面に蒸着する金属の選定、蒸着条件の選定など)を行ってスペクトル測定を試みた。更なる検討を次年度継続して行う。 2.細胞培養:FI-PEARL単粒子焼結膜上で、バイオリスクのある増殖因子を用いることなく、ラット骨髄間葉系幹細胞の培養を行い、FI-PEARL単粒子焼結膜が増殖性、接着形態・強度、分裂過程、未分化性保持に及ぼす影響をSEM、AFM、及びCLSMを用いて調べた。FI-PEARL単粒子焼結膜は、フェノキシイミン配位子を持つ遷移金属錯体触媒(三井化学FI触媒)を用いたエチレン重合で、初めて得られる直径10μm以下の超高分子量ポリエチレン微粒子をLB法で配列して得られた単粒子膜を焼結した膜である。従来知られている分裂様式とは異なり細胞は伸展せず半球状で接着し、その接着状態で分裂することがわかった。ウイルス感染などの恐れのある成長因子が無くとも、従来の培養基材と同等以上の増殖性が得られ、加えて接着性が弱くタンパク質分解酵素を用いることなく水洗浄のみで細胞を剥離回収出来る可能性を見出した。本結果は、FI-PEARL単粒子焼結膜がウイルス等の感染の恐れがなく迅速に骨髄間葉系幹細胞を増やし、タンパク質分解酵素を用いることなく、容易に剥離回収出来る培養基材である可能性を示唆するものである。また、明らかになった細胞の接着形態と増殖性の相関性は、骨髄間葉系幹細胞を取り巻く生体内環境(通常は増殖・分化を誘起せず、必要時に増殖・分化を促す)をFI-PEARL単粒子焼結膜表面が再現している可能性を示唆しており、本結果は生体内組織再生メカニズム研究にとって科学的に意義ある発見と位置づけることが出来る。
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