2009 Fiscal Year Annual Research Report
生体膜保護作用を利用した革新的炎症抑制デバイスの開発
Project/Area Number |
21650105
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鄭 雄一 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 教授 (30345053)
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Keywords | 生体防御 / 炎症抑制 / トレハロース / 生体膜保護 / アラキドン酸カスケード |
Research Abstract |
今年度は、トレハロースによる炎症抑制作用に関して細胞モデルを用いて分子機序を解明し、トレハロースの生体膜保護作用に基づく炎症抑制効果を検証した。 細胞を赤血球溶血液によって処理すると、アラキドン酸カスケードが活性化する。この結果は、溶血液中に含まれるヘモグロビンもしくは鉄から生じるフリーラジカルが細胞質膜を過酸化し、炎症反応が活性化されるためであると考えられる。トレハロースは、この溶血液刺激によるアラキドン酸カスケードの活性化を抑制する。トレハロースの効果に関して検証を行った。 トレハロースの赤血球の溶血に対する効果、フリーラジカルを消去する効果に関して、それぞれElectron spin resonance(スピントラップ法)などを用いて検討を行ったが、トレハロースの特異的な抑制効果は観察されなかった。一方で、溶血液刺激後の過酸化脂質の生成を定量したところ、トレハロースによる有意な抑制効果が見られた。この結果は、トレハロースによって細胞膜が保護されたことにより、脂質の過酸化が抑制されたため、アラキドン酸カスケードが抑制されたことを示唆している。さらに溶血液刺激に対するトレハロースの効果として、各種炎症性サイトカイン(TNF-α,IL-6,IL-1α,IL-1β)、iNOS(Inducible nitric oxide synthase)やCOX2(cyclooxygenase2)といった炎症メディエーターの合成も抑制されることを明らかにした。 溶血液刺激だけでなく、他の炎症性刺激に関してもトレハロースが抑制効果をもつかを検誕したところ、過酸化水素添加時のアラキドン酸カスケードの活性化、乾燥時における細胞死の抑制及びアラキドン酸カスケードの活性化をトレハロースは有意に搾制することを見出した。
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