2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本古来の芸能の技法を西洋自然科学によって究明する
Project/Area Number |
21650155
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
深代 千之 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (50181235)
|
Keywords | 舞踊 / 動作解析 / 関節トルク / 3D保存 |
Research Abstract |
日本古来の伝統芸能:狂言における「はこび」歩行は、膝を曲げて腰を落とし、重心の上下動をできるだけ少なくする動作である。本年は、この狂言歩行の3次元動作解析を行い、動作のバイオメカニカルな個人差について検討した。対象者は、狂言の山本東次郎家で典型的な狂言歩行が可能な3名の演者であった(年齢:29~49歳、身長:1.69~1.70m、体重:71.9~85.3kg、修業経験:23~26年)。動作は8mの実験歩行路において、狂言歩行を3試行行った。その際、動作を7台の赤外線カメラを用いたモーションキャプチャとフォースプレートシステムによって解析した。出力変数は、身体重心の高さ、垂直と水平前後方向の床反力、下肢3関節の角度・トルク・パワーであった。 狂言歩行(平均速度:0.50m/s)における重心高は、静止立位よりも平均7.7cm低く、垂直変位は平均1.4cmと小さかった。歩行中の支持局面における垂直床反力は3演者ともに体重程度であるが、プッシュ局面の前後方向床反力は個人差がみられた(27,62,71N:平均53N)。下肢3関節トルクについては、股・膝関節では個人差が大きく、一方足関節では同一の発揮パターンを示した。下肢3関節の仕事は、股・膝・足関節それぞれ、平均で19.7・-10.6・0.6Jであった。はこび歩行の特徴である「すり足」によって消失した摩擦エネルギーは14.0Jと計算され、これは主に股関節の仕事によって遂行されていると考えられた。 以上より、はこび歩行は、膝・足関節によって腰を低く保ち、股関節によって身体を前方に移動させる。演者間の相違は、関節角度などの運動学的な要因よりも、力発揮のような力学的要因の方が大きいことが明らかとなった。
|
Research Products
(5 results)