Research Abstract |
高齢者や身障者の時間進行と共に衰えていく体の機能を、システム側が自動的に調整し補助することで、できるだけ同じパフォーマンスを維持できるシステムの設計を行った。具体的には、パソコン操作の際,ユーザー特有の動作特性に合わせてポインタの動きを改善する手法である.これにより,病状の進行によるユーザー特性の変化があっても,簡単なキャリブレーション測定から,その時点で最も扱いやすいポインタ操作の感度を見出すことが出来るようになった.そして,障害者を被験者として実験を行い,異なる感度設定による移動時間の測定から,最も効率のよい動きとなる設定値を見出せることが確認出来た.また,ターゲット属性に関しては,従来の方向依存性,距離依存性,ターゲットサイズといった3つの要素に加えて,感度調整の基となる加速度の依存性について検討を行い,高齢者や身障者たちが扱う際に大きく寄与する要素であることが確かめられた.これにより負担の少ない設定から徐々に設定を変更することでリハビリとしての効果が期待できる.また,視力の低下や姿勢維持の困難から生じる画面状態の認識や情報取得の衰えに対し,視覚情報を聴覚情報に置き換える試みを行い,効果音を有効に取り入れることで,画面の状態把握や遷移を認識できる設計を行った.静的な状態での画面情報の提供による作業の効率化について検討を行い,"音の風景"の概念を工学分野に取り入れ,心地良く操作できる設計の有効性を示すことができた.本システムを評価するため,本システムを適用させた場合と標準仕様の場合とで,操作にかかる時間を測定する比較を行った.その結果,本システムを適用させた場合の方が,よりユーザーの状況に適合し,効率よく操作できることが明らかになった. このシステムにより、衰えていく体の機能をできるだけ維持し,パソコンなどを楽しく操作できることができ、たとえ寝たきりの生活になっても,彼らの生きることへの一つの大きな活力となり得る。
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