2009 Fiscal Year Annual Research Report
ジョン・アルギリスを中心とする有限要素法の確立に関する研究
Project/Area Number |
21650231
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小玉 乃理子 Waseda University, 高等研究所, 助教 (20329105)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小宮 一仁 千葉工業大学, 工学部, 教授 (30234884)
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Keywords | 技術史 / 有限要素法 / 航空工学 / 構造解析 / 英国王立航空協会 |
Research Abstract |
従来、初期の有限要素法の開発過程の技術史上空白期である、ジョン・アルギリス(John H. Argyris)を中心とする第二次世界大戦中から戦後初期にかけての英国王立航空協会等での研究動向についての学術資料調査と分析を実施した。学術資料調査は国内外の大学・研究機関等で実施し、延べ43件の資料を収集・分析した。資料の分析の結果、以下の知見が得られた。 ・有限要素法の原型であるMatrix force methodは、アルギリスが英国王立航空協会に在籍した1943年から1949年の間に彼自身によって開発され、開発目的は、航空機翼のリブに軸力が作用した時の翼のスキンプレートに発生するせん断応力の算定のためであった。 ・Matrix force methodは、1943年以前の一連の航空機翼の構造解析法から発展したものであり、同時期に応用数学者クーランが提案していた変分法の力学問題への適用に関する研究との関連性は薄い。 ・1943年から1949年の間に、アルギリスは英国王立航空協会の研究報告書に少なくともMatrix force methodに関する3編の研究論文(報告)を提出しているが、これらは全て却下(不採択)とされ公開されていない。これには軍事機密上の理由と、コンピュータ未開発時期のため実質的な計算が不可能といった理由が考えられるが、これについては確証が得られず、今後の研究課題である。 以上の成果は、第2次世界大戦以前の古典的な構造解析法と、1960年以降のクラウ(有限要素法(Finite Element Method)の名付け親)等による実際の航空機設計への適用及びツェンケービッツ等による有限要素法コンピュータ計算コードの開発の間の技術史上の空白期を埋める新知見であり、技術史上の新分野である有限要素法開発史の展開に寄与するものである。
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