2009 Fiscal Year Annual Research Report
新たな気候変動指標の確立に向けたセルロース分子内酸素の同位体不均質の検証
Project/Area Number |
21651005
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
北川 浩之 Nagoya University, 大学院・環境学研究科, 教授 (00234245)
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Keywords | 熱分解ガスクロマトグラフ / セルロース / 分子内同位体異常 / 酸素同位体比 / 気候変動指標 / 質量分析 / ダブル熱分解 / PyGC / PyIRMS |
Research Abstract |
新たな気候変動情報を解読する方法の確立を目指して,熱分解ガスクロマトグラフィー・熱分解同位体比分析法(PyGC/PyIRMS)による高分子化合物の熱分解成分の酸素同位体比の測定法を確立し,樹木年輪試料から抽出されるセルロース(グルコース)の分子内酸素同位体比の不均質を明らかにすることに取り組んだ.Agilent7890ガスクロマトグラフにフロンティア・ラボ社製PY-2020Dを組合したシステムを使い,セルロースの熱分解生成物の分子の種類や熱分解効率について検討を行なった.また,熱分解生成物はガスクロマトグラフの分離後,各成分の存在割合を求めるために一部をFID検出器に導き,大半はニッケル製の高温熱分解カラムに連続的に導入し,各成分をCOとH2に変換した.COとH2の一部はスピリットバルブを用いて連続導入式質量分析計に導入され,質量数[28],[29],[30]を検出し,酸素同位体比を求めた.本一連の実験で,研究計画時には予期できなかった問題・課題が明らかになった.(1)熱分解性生物の熱分解効率が熱分解カラムに導入する量によって大きく変動する点,(2)熱分解性生物の熱分解で生成される水素による質量分析計イオンソースでのCOの酸素同位体効果への影響である.(1)に関しては,熱分解カラムの温度を1200℃程度(1050℃で実験,現在,マイクロ高温炉の作成を行なっている)まで引き上げれば95%程度まで熱分解性生物がCOに熱分解されることが明確になった.(2)に関しては,質量分析計に導入する前にTiスポンジカラム(設定温度350℃)を通すことでH2を除去できると考え,現在,水素除去率の向上に関する基礎実験を行なっている.現段階では,数パーミル以下の酸素同位体比の不均質の検出するためには更なる装置の改良が必要であるが,天然セルロース分子には酸素の同位体比に関して不均質があることが,本研究で新たに開発した装置を使うことで明らかになった.
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