2010 Fiscal Year Annual Research Report
ウラン同位体比を指標とした風送塵の起源を同定する新規手法の検証
Project/Area Number |
21651008
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
木川田 喜一 上智大学, 理工学部, 准教授 (30286760)
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Keywords | 風送塵 / ウラン同位体比 / 大気降下物 |
Research Abstract |
大気圏内核実験が頻繁に行われていた時代の風送塵を反映する試料として,気象研究所が採取した1965年から1979年の秋田における大気降下物試料のウラン同位体比を求めた.毎年3月に採取された降下物試料は,U-235/U-238比の天然比に対する偏差としてマイナス1%からプラス1%の幅で変動を示した.このウラン同位体比の変動と黄砂の観測回数との間には相関性は見出せなかった.また,1977年1月から1978年12月までの24ヶ月の降下物試料からもウラン同位体比の明らかな変動が見出された.この2年間のウラン同位体比の変動傾向に季節性は認められず,Cs-137やSr-90などの核分裂生成物の降下量との間にも明らかな相関性は認められないが,プルトニウム降下量との間には相関が認められた.日本国内へのプルトニウム降下量が高いとき,大気降下物のU-235/U-238比は相対的に低い値を示す傾向にある.このことは,同時期の国内大気降下物のウラン同位体比の変動が,大気圏での水爆実験に伴ったものであることを強く示唆している。一方,福岡の1990年代から2000年の国内大気降下物からも天然とは異なる同位体比を有するウランが見出され,近年も核実験により汚染された中国大陸の土壌が飛来している可能性が高い.黄砂粒子への寄与が高いと考えられる中国大陸の砂漠地帯およびモンゴルのゴビにおいて表層土壌のウラン濃度とウラン同位体比,ストロンチウム同位体比を求めたところ,ゴビからは一部で天然より僅かに高い割合でU-235を含む土壌が見出されたがストロンチウム同位体比は国内で観測された黄砂粒子とは異なり,これまでのところ国内で観測される風送塵との関係を直接的に指し示す分析結果を得るに至っていない.今後は大陸土壌を粒径ごとに分けたキャラクタリゼーションを行い,風送塵粒子との対比を進める必要がある。
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