2009 Fiscal Year Annual Research Report
地質の安定同位体を利用した環境実感指標の開発:愛媛県西条市を例に
Project/Area Number |
21651012
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
中野 孝教 Research Institute for Humanity and Nature, 研究推進戦略センター, 教授 (20155782)
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Keywords | 環境指標 / トレーサビリティー / 実感指標 / 安定同位体 / 循環型社会 / 産地判別 / 西条市 / ストロンチウム同位体 |
Research Abstract |
本研究の目的は、水や農水産物に含まれている元素の起源を流域内と流域外に分類し、両者の寄与率を評価することにより、地域およびグローバル化を示す新たな環境指標を提案することにある。この目的を達成するために、日本各地で採取してきた水や農産物に加え、すでにデータが集積しつつある愛媛県西条市において新たに試料を採取し、それらの元素組成および安定同位体組成を分析することを目的として研究を実施した。 西条市の河川水約150地点の分析データを再解析し地図化した結果、(1)同一地点における水質変化が少ないこと、いっぽう(2)自然環境と人間活動の違いに応じて水質成分の地理的変化が明瞭に認められた。このことから、水の元素組成や安定同位体比(水素、酸素、硫黄、ストロンチウム)の地図は環境診断のツールとして有用であることを再確認できた。とくにストロンチウムの安定同位体比は西条市の西部と東部で異なる一方で、水のそれと1:1の関係を示すことから、農産物の産地判別ツールとして利用できる。いっぽう硫黄を含まない花岡岩が分布する西部地域では、水の硫黄同位体比は大気を通した越境性起源であり、中国石炭由来の硫黄の寄与が考えられる。流域の鉱山付近は高いアンチモンや銅の濃度を示すが、農業地域の水は重金属元素が高い傾向があり、肥料を通して流域外からもたらされた可能性が高い。これらより、グローバル化の影響を評価する指標として、重金属元素の安定同位体比が高い可能性を有することを確認できた。さらに、昨年度末に市全体の1000地点で市民の協力により地下水を採水できた。その水質情報の提示により、地域と地域外の物質を市民側に提供できる状況を作ることができた。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article]2010
Author(s)
中野孝教
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Journal Title
地球環境のトレーサビリテイー. 安定同位体というメガネ(和田英太郎・神松幸弘編)(昭和堂)
Pages: 59-100
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