2009 Fiscal Year Annual Research Report
漁業権放棄にみる開発と資源・環境保護の選択の効率性、及び公平性の法経済学的分析
Project/Area Number |
21651014
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
大澤 正俊 Yokohama City University, 国際マネジメント研究科, 教授 (50305463)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東田 啓作 関西学院大学, 経済学部, 教授 (10302308)
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Keywords | 合意形成 / 漁業権放棄 |
Research Abstract |
今年度は、漁業権放棄に関する資料の収集、および実際の漁業権を放棄した事例においてそのプロセスや補償がどのように行われたかの調査を行った。事例としては、横浜市漁協を取り上げた。特に、横浜港の港湾計画実施の中で、1960年代から70年代にかけて最後の大きな漁業権放棄の交渉が行われた根岸、平潟、金沢地先に焦点を当てた。 ヒアリングは、横浜市と横浜市漁協、および横浜東漁協に対して行った。その結果、以下のようなことが明らかとなった。 1)漁業権放棄に対する補償は、期待所得以上のものになる可能性が高い。 2)ステークホルダーは、その他市民を含めた多くの経済主体が考えられるにもかかわらず、基本的には漁業者とのみの交渉である。 3)自治体側と漁協側の合意内容に対する認識が異なる。 4)漁協内部での分配のあり方は、漁協によって異なる可能性が高い。 また、これ以外の漁業権放棄に関する資料収集の結果も合わせると、漁業権放棄の交渉プロセスと結果には、漁協内部の意思決定メカニズムが大きく影響を与えている可能性があることが分かった。一方で、その他多くのステークホルダーの費用や便益は反映されていない可能性が高い。さらに、当初の環境評価と事後的に明らかとなる環境への影響とが異なることも多く、評価の正確さと事後的な費用負担も、権利配分の変更の結果発生する「便益の配分」に大きな影響を与えうる。 これちの沓料収集や調査によって、次年度に理論分析や権利配分の妥当性の考察を行うにあたっての、重要な前提となる事実を明らかにすることができたと考えている。
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