2010 Fiscal Year Annual Research Report
低塩素化水酸化体PCBsの分析法開発と脳移行に関する予備的研究
Project/Area Number |
21651024
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
田辺 信介 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (60116952)
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Keywords | 環境汚染 / PCBs / 水酸化PCBs代謝物 / 分析法 / 野生生物 |
Research Abstract |
平成22年度は、世界的に報告例が少ない4塩素以下の低塩素化OH-PCBs異性体を含む、脳および肝臓中の3~8塩素化OH-PCBsを対象とした分析法の開発を目指した。とくに、低塩素化OH-PCBs(3-4塩素化体)は水溶性が増すため、抽出・分配効率や分画・クリーンアップ条件を検討し、分析法の確立を目指した。まず、中性のPCBs画分と酸性のOH-PCBs画分の分配法について検討した。肝臓を抽出した場合、抽出液には脂肪やタンパク質など多量のマトリクス成分が含まれる。また脳組織を抽出すると多量のリン脂質含まれる。これまで血液の分析で用いてきたKOHによる分配では、マトリクス成分の多くがOH-PCBs画分に分配されるため、誘導体化(メチル化)処理の妨げとなっていた。そこで、分配作業で使用する溶媒について検討した結果、アセトニトリル/ヘキサンによる分配が、誘導体化処理を妨げるマトリックス成分とOH-PCBs画分を効率よく分画することができた。次に分配されたOH-PCBs画分に対して、数種の不活性吸着剤の使用を検討し、高いクリーンアップ効果と高い誘導体化効率が維持可能な条件を選定した。通常マトリクス成分の除去には硫酸によるクリーンアップを適用されるが、低塩素化体は酸に不安定なことが予想されるため、数種の不活性吸着剤の使用を検討し、OH-PCBs分析のための高い誘導体化効率を維持できる条件を選定することを目的とした。検討の結果、SampliQと呼ばれるゲルクロマトグラフィーと5%含水シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Wako S-1)組み合わせて使用することにより、残留するマトリクス成分を効率的に除去することが出来た。 本新規分析法の開発により、野生生物の脳および肝臓中に残留する3~8塩素化体OH-PCBsの一斉分析が可能になった。
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