Research Abstract |
本研究は,有機分子に包まれたコア・シェル型半導体量子ドット(QD)を,蛋質分子の一種である分子シャペロンと生理活性状態を保った状態で結合させ,新規なナノ構造物における新規な相互作用の特異性と普遍性を検証し,能動的で融合的な分子デバイス機能開拓への筋道をつけることである。そのため本年度は,サイズ分布の狭帯化に注力したCdSe/ZnS/TOPO系QDナノ結晶成長技術及び好熱性古細菌由来のPFDとCPN,及び酵母由来のsHspの3種類の分子シャペロンの抽出・精製技術の高度化を先ず進めた。これらの結合には,分子シャペロンの活性保持が必須の要請なので,反応と操作は全て緩衝液(i.e.水溶液)中で行う必要がある。これに関しては,QDを一旦n-ブタノールに分散させた後,t-ブタノールを触媒として超音波撹拌操作と緩衝液による希釈を精密に組合せることで,緩衝液中に分散・保持し得ることを見いだし,約5%の結合率を得るに至っている。この効率向上は,次年度の目標になる。この実証には,蛋白分子にCy5をラベル化し,独自に構築した単一分子計測の手法を適用し,QDと例えばCy5-PFDが同一位置からの発光で有ることを超解像画像解析により示すこと,及びQDからCy5-PFDへの共鳴蛍光エネルギー移動(FRET)を計測することで,検証しつつある。この2現象の共存は,FRETの効率がドナー(QD)とアクセプター(Cy5)間の距離だけでなくそれらの空間的配向にも依存する事を考慮すれば十分可能であり,特に後者は,現在定量的に解析中である。特に2波長励起光学系による単一分子計測レベルでのFRETスペクトル計測は,他に例を見ないと考える。本QDは2次元遷移双極子の系であり,偏光回転変調法により3次元配向が抽出できる特徴があり,その動的挙動の抽出も今回検証した。
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