2010 Fiscal Year Annual Research Report
「図説」と「書画」の分析・比較による近世思想史研究領域の拡大と深化
Project/Area Number |
21652006
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
片岡 龍 東北大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (50400205)
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Keywords | 図説 / 書画 / 韓国 / 儒教 / 易 / 都市 / 地方 / 禅 |
Research Abstract |
本研究では、中国思想に淵源をもち、韓国の儒教において特徴的に見られる「図説」と、同様に中国文化に淵源をもち、日本では中世の五山文学の時代から近代初頭まで盛んに製作された「書画」を中心素材とし、また図像と文献、中世の禅と近世の儒教、韓国思想と日本思想、都市と地方といった複数の分析枠組みを駆使して、14Cから19Cの儒学を中心とした日本の学術・文芸の特色を、東アジアの思想史・文化史(特に儒教文化が民衆の生活レベルにまで浸透したと言われる韓国のケースと比較)の中に位置づけ、その性格を明らかにすることをめざしている。「図説」や「書画」の現物調査を可能な限り実施しながら、同時にそれを儒者などの文集に残された図の解説や「序・題跋・銘賛」などと突きあわせることによって、従来の文献中心の研究では捉えきれなかった前近代の学術・文芸界の性格の豊かな再現に向けての作業を行っている。 より具体的には、前年度に引き続き、「図説」「書画」と文献史料の関係についての分析・考察、それをふまえた近世日本思想史の新たな思想的見取り図と基本的思考枠組みの検出、また韓国思想との比較をいっそう進めた。特に「図説」「書画」を、当時の東アジアの知的体系と動揺という静態的・動態的視座の中に位置づけるため、韓国の研究者と検討会を行なった。また「図説」「書画」という図像資料と文献史料の複合的性格をもった資料に着目することにより、これまでの文献中心の研究では捉えきれなかった、知識人・庶民を含んだ近世の基本的な思考枠組みを提示することを試みた。その過程で浮かび上がってきた、韓国儒教が地方を拠点としているのに対して、日本儒教は都市を中心に展開しており、「図説」の製作の多寡は、このような日本・韓国の儒教の社会的存在形態の違いをその要因としていることを実証的に検証する作業を前進させた。
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