2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本近代文学における装幀と図像に表れた作家の造本意識の研究
Project/Area Number |
21652024
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Research Institution | Tokuyama College of Technology |
Principal Investigator |
一色 誠子 徳山工業高等専門学校, 一般科目, 教授 (80259936)
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Keywords | 装幀 / 図像 / 造本意識 / 日本近代文学 / 室生犀星 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、本年度も室生犀星紀念館(金沢市)および石川近代文学館(金沢市)に所蔵されている室生犀星の著書の撮影と著書に関する調査を3回(平成22年9月7日~9日,平成23年2月14日~16日,3月2日~4日)行った。この間、200冊の著作のうち166冊の撮影をし、記録メディアへの保存を済ませた。書籍の状態のよくないものや、書籍に保護シートをはずせないものもあったがそのまま撮影をした。本年度の調査の中で、昭和20年前後の紙の調達の難しい折の造本の工夫には、注目すべき点が多くあった。例えば、前年度の調査で『蝶・故山』(昭和16年7月/桜井書店)と『甚吉記』(昭和16年12月/愛宕書房)が、内窓につながりがないにもかかわらず同じ表紙模様であることがわかったのだが、紙の調達の都合によるものであることが判明した。加えて、『日本美論』(昭和18年12月/昭森社)とその再版である『夕映梅花」(昭和21年10月/昭森社)の調査では、犀星と出版社との装幀に関する書き込みの閲覧もでき、装幀と造本の過程を知ることができた。また、調査と並行して、明治44年から昭和40年にかけての装幀と造本に関する文献調査も行った。特に、岩本柯青、庄司浅水、柳田泉らが創刊した『書物展望』などを舞台に、装幀や造本に関する議論が盛んになされ、それ以降の装幀と造本に影響を与えていった昭和10年前後を中心に分析と考察をした。さらに、昭和10年前後の犀星とその周辺に焦点を当て、作家と装幀家の思惑がどのように働いていたのかを探り、装幀と造本の議論が盛んになる中で犀星が自著にどのような装幀を施していったのかを考察した。これらについては、「装幀と造本をめぐる作家・装幀家・芸術家の思惑-室生犀星とその周辺から-」(「日本文学研究」第46号pp.28-pp.38)にまとめて発表した。
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Research Products
(2 results)