2009 Fiscal Year Annual Research Report
多変量解析を用いた日本書紀の区分論・編纂論に関する基礎的研究
Project/Area Number |
21652025
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Research Institution | Kagoshima National College of Technology |
Principal Investigator |
松田 信彦 Kagoshima National College of Technology, 一般教育科文系, 准教授 (40450150)
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Keywords | 日本書紀 / 区分論 / 編纂 / 筆録者 / クラスター分析 / 多変量解析 |
Research Abstract |
初年度(21年度)は、まず研究のベースとなる調査対象のデータ化を行った。本研究では日本書紀各巻における、複数の文字使用の相関を調査することが主眼であり、信頼できるテキストデータを作成する必要があからである。今回は、岩波書店から刊行された日本古典文学大系本の日本書紀を底本に、データ作成を行った。それにともない、各巻の使用文字数のカウントなど、調査に際し用いる基礎データを収集した。 次に作成したテキストデータをもとに、調査で用いるパラメータ(文字)の抽出を行った。従来の研究では、特定の1文字についての使用分布を調査し、そのばらつきによって、日本書紀各巻を区分していたが、本研究では、それぞれに関係の深い2文字を抽出し、その使用状況の相関関係をもとに日本書紀各巻を区分するが、どの文字で調査を行うかが最大のポイントとなる。区分の目的は日本書紀の編纂・筆録の実体を明らかにするためで、特に筆録者によって差異の出てくる文字を選ぶ必要があるからである。本研究では、まず、漢文の助字である「於」「于」の2文字の相関をしらべた。いずれも場所を表す場合に多く用いられ、しかも書き手によって、どちらを使用するか、あるいは使用せずに場所を表すかが、大きく変わってくるからである。この2つのパラメータでクラスター分析にかけた結果、従来から指摘されていた、いわゆるα群とβ群とほぼ同じ結果が得られただけでなく、さらにそれぞれの群が、細かく区分できることを示した。さらに、基本的には日本語では用いることのない、文末の助字「焉」「矣」の2文字を加え、4つのパラメータで分析し、4文字の相関をみても、基本的に上述の結果と同じものが得られた。 従来の日本書紀区分論は大きく2分割するだけであったが(調査方法の限界でそれ以上の区分が不可能)、本研究でそれをさらに細分化することが可能となった意義は極めて大きい。
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