2010 Fiscal Year Annual Research Report
近代ヨーロッパ文学における「人種」問題の研究-EU型多文化共生論への寄与
Project/Area Number |
21652033
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
柏木 治 関西大学, 文学部, 教授 (10214298)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浜本 隆志 関西大学, 文学部, 教授 (40103387)
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Keywords | 人種論 / 骨相学 / 黒人表象 / ジェンダー / 19世紀フランス文学 / 植民地イデオロギー / 混血 / トルコ |
Research Abstract |
本年度の研究課題は、トルコを中心とするイスラームの表象が、ヨーロッパの18世紀、19世紀を通じてどのように形成、変容されてきたかについて検証することであった。研究代表者と分担者は、平成22年夏にフランス、ドイツおよびイタリアでこのテーマに関する資料調査を実施するとともに、こんにちのEUにおけるイスラーム的表象の実相を探るべく現地調査も行った。本研究が、近代のヨーロッパ文学テクストを素材としつつも、現在のEUにおける多文化共生の問題も視野にいれているからである。この表象研究は現在も続行中であり、最終年度(23年度)にいちおうの成果をみる予定である。 一方、前年度(21年度)から行ってきた人種理論およびイデオロギーに関する歴史的研究においては、18世紀以降、「人種」観念が次第に科学的ディスクールへと変換されていく文脈を骨相学との関係から検討を加え、19世紀前半においてこの「科学」が当時の政治とも無視できない関係を結んでいたことを論じた(「文化イデオロギーのなかのphrenologie(1)-フランス王政復古期から七月王政へ」『文學論集』)。また、ジェンダー論という枠組のなかでも「人種」に関する研究を発表し(『ヨーロッパ・ジェンダー文化論女神信仰・社会風俗・結婚観の軌跡』、明石書店)、とくに17~18世紀のフランス植民地における異人種間結婚(および同棲)に光をあて、ヨーロッパ近代の「混血」のとらえかたについて論及した。さらに、ヨーロッパ内部でのさまざまなマイノリティ(魔女、娼婦、異端)に関する歴史的検討をとおして、近代における「他者」へのまなざしの構造をあきらかにしようとした(同書)。 これまでの作業は、射程を大きくとりすぎた面もあり、現時点ではいくぶん拡散的な状態にある。23年度は最終年度にあたるため、過去2年間の研究をうまく総合し、形あるものにまとめたい。
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Research Products
(3 results)