2010 Fiscal Year Annual Research Report
時代の影響を取り入れてポライトネスの変容をとらえる言語行動理論構築の試み
Project/Area Number |
21652039
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
太田 一郎 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (60203783)
|
Keywords | 言語行動 / ポライトネス / 社会言語学 / インターネット掲示板 / メディアとことば / 電子コミュニケーション / 通時的視点 / 文化批評 |
Research Abstract |
本研究の目的は,ポライトネス理論に「社会の変化」の影響という「通時的」視点を加えた対人コミュニケーション理論の試案を提示することにある。そのため,ITメディアの急速な普及後に新たな秩序が形成されてきたと考え,サイバースペース上のコミュニケーションの変容をポライトネスのあり方の変化から検証し,対人行動の変化を取り込むことが可能なより普遍性の高い修正版ポライトネス理論の提案を試みることにある。 今年度は,具体的なデータとなる掲示板(2ちゃんねるの「板」と「スレ」)の特定と語彙,統語,談話展開等の言語面に注目し,その相互行為的側面の検討を中心に行った。 まず,調査対象を2000年から現在まで続くライトノベル板のスレに決め,年別に10スレを抜き出した。そのスレの書き込みを,「書き込みの行為機能」「書き込みの話題への効果」「書き込みする際の姿勢」の3つのレベルで分類した。その結果,以下のような点が明らかになった。 (1)「行為機能」は,情報提供,問題提起等9類型,目的から分類した行為の種類は「聞く」「言う」など4パターンがある (2)「話題への効果」は,「応答」「煽り」「ネタ」などの典型的行為類型を,「同調/非同調」「趣旨遵守/ズレ」などのレスの流れから検討すべきである (3)「書き込み姿勢」は,談話の進行に対する「推進/妨害」という関与のあり方を基本とし,それが「レスへの評価」「情報の要求と教示・提示」「話の総括」「(他者への攻撃等)ノイズ」などとしてとらえられる 今年度はこれらの分析レベルと分類が可能であることを示すところまでで終了した。ポライトネスからどのようにとらえることができるかは,文化批評等の成果も取り入れて対人コミュニケーション行動理論の整理と仮説の考案なかでの次年度の検討課題とする。
|