2011 Fiscal Year Annual Research Report
時代の影響を取り入れてポライトネスの変容をとらえる言語行動理論構築の試み
Project/Area Number |
21652039
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
太田 一郎 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (60203783)
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Keywords | インターネット / 掲示板 / ポライトネス / 言語行動 |
Research Abstract |
最終年度の23年度は,前年度からの調査を続行し,代表的なサイバースペース上の匿名掲示板である2ちゃんねるの書き込みを資料に,おもに談話展開等の言語的側面の相互行為を中心に質的,量的両面からの調査を行った。今年度の研究は,「2ちゃんねる」において行為とその談話への効果,書き込み者の姿勢などからことばの選択はどのように行われているのか,また書き込みの進行とことばの選択に何らかの関係がないかという談話面でのポライトネス現象につながる点を探ることを中心に進めた。匿名掲示板においては,日本語でのポライトネスの明示的指標となる敬語的表現は,相手と自分の社会的関係が特定できないので,利用するのが難しくなるためである。調査の対象は「ライトノベル板」の9スレを抽出し,総数9908のレスに対してひとつずつ属性を示すタグを付加し,スレッドの分析を行った。タグは各レスごとに「行為機能」「話題効果」「書き込み姿勢」という3つの談話での機能にわけて付与した。各機能をタグをまとめることで,スレッド消費のあり方が明確にとらえられ,ある種の会話パターンが継続的に表れていることの裏付けを得ることができた。とくに話題提起や感想などのレスからスレッドが消費されていく過程では,「交話」「遊び」「攻撃」「疑問」という4つの話題の展開が見られ,この展開の領域を相互に行き来することで全体の談話が構成されていく様子がとらえられた。これらの談話の構成がサイバースペース上での「デフォルトのポライトネス」を構成する重要な要素として位置づけることができるのではないかという知見を得た。
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