2009 Fiscal Year Annual Research Report
旧日本軍人による蒋介石支援に関する聴取り調査研究:戦後日中関係史の再構成にむけて
Project/Area Number |
21652062
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
張 宏波 Meiji Gakuin University, 教養教育センター, 准教授 (00441171)
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Keywords | 蒋介石 / 岡村寧次 / 日中関係 / 山西残留 / 閻錫山 |
Research Abstract |
本研究は、蒋介石・岡村寧次が中心となった日本と中国との間の様々な分野における非公式な人的繋がりが、戦後初期の日中関係の形成にどのようにかかわっていたのかを浮かび上がらせるために、高齢化する当事者への聴き取り調査を一人でも多く行うことで、史料記録として残されていない歴史を聴き取りによって蓄積していくことを目的とした。 具体的には、山西省に残留して閻錫山・国民政府軍と協力し合って共産党軍と戦った経験を持つ元残留兵およびその関係者、また東北部に残った後シベリアに抑留された関係者の経験を聴き取った。全国各地に住む元重要戦犯、および元前線兵士や民間人ら、計十数名から時間をかけて複数回にわたって丹念に聴き取りを行った。 聴き取りの焦点としては、残留に至る経緯、残留の目的や理念がどう説明されたか、残留の体制、実際の残留活動の実態、国民党軍とのかかわりのほか、帰国後の活動や残留、また抑留経験者同士の交流などの様子についても聴いた。今回の調査の中で興味深かった点としては、残留の中心者が呼びかけた理念には「スムーズな引き揚げの実現」や「日本帝国の復興のための足場を作るための残留」といった名目がいくつかあったなかで、呼びかけに応じた兵士たちには敗北感が希薄だったことや軍の指揮系統が残っていたなどから「皇国日本の再興」という側面は比較的受け入れられやすかったこと、国民党の閻錫山軍への軍事協力という名目とはよそに、戦闘が長期化し苦戦するにつれて日本軍が前面に出て共産党軍と戦闘を交わしており、それは「反共」意識が末端の兵士にまで根深く浸透していたがゆえに可能であったこと、帰国後に残留兵を見捨てて先に帰国した司令官や参謀を訪ねた末端兵らが「カネが欲しければ台湾へ行ってもらってこい」などと聞かされていた点などがあった。いずれも、日本軍と国民党軍との繋がりの深さを物語る内容であった。
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