2009 Fiscal Year Annual Research Report
ハンディキャップをもつ人々の積極的社会参加に関する日本の地域文化とその特質
Project/Area Number |
21652067
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小口 千明 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 教授 (20169254)
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Keywords | ハンディキャップ / 地域文化 / 日本 / 盲僧 / 妙音十二楽 / 泊り宿 / 九州 / 歴史地理学 |
Research Abstract |
日本の伝統社会において、全盲者や弱者には、鍼灸施術師や按摩師として社会的な活動をする道がひらかれており、また、九州地方には、全盲の僧侶が仏教音楽を演奏して人々の崇敬を集める地域文化が存在する。このように、日本の伝統文化のなかには、心身に障害をもつ人々に対して積極的に地域社会への参加を促し、正当な地位を認めて共生してきた事実が存在する。しかし、これらの文化はこれまで学術的にはあまり注目されず、その文化的意義に関る検討は不十分であった。 そこで、本研究は、日本の伝統文化のなかで心身にハンディキャップをもつ人々が地域社会の重要な一員として社会参加をし、地域社会において共生してきた事実を発掘するとともに、その実像を学術的に把握することを目的とした。 本年度は、とくに盲僧の活動とそれを受容する地域住民側の伝統的習俗について重点的に調査を実施した。盲人や弱視者は日本全国で生活をしておられるが、盲人が盲僧として人々の崇敬を集める道を選ぶ事例は西日本、とくに九州地方に強い分布が認められる。これには、盲僧側の思考・意識だけにとどまらず、地域住民の側が盲僧に強い崇敬の念を抱く習俗の成立にもとづく地域文化の存在が車要な役割を果たしている。 このような地域文化が九州南部に存在することは、ごくわずかな報告例はあったが、本年度の調査・検討により、九州北部・九州東部にも分布し、さらに古くは中国地方西部にも今布が及んでいた可能性が強いことが判明した。この文化の背景には、盲僧による琵琶の演奏という仏教音楽が深く関わることが指摘できる。この仏教音楽として、妙音十二楽が注目される。また、地域文化として存立するための習俗として、住民が盲僧に対して無報酬で奉仕をする泊り宿の存在が重要であることが明らかとなった。
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