2010 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル・ハウスホールディング―高齢化時代の国境横断的家事・介護労働の研究
Project/Area Number |
21653013
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
遠藤 乾 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (00281775)
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Keywords | グローバル化 / 家庭 / 越境 / ジェンダー / エスニシティ / 福祉 / ケア / 移民 |
Research Abstract |
本研究は、グローバル・ハウスホールディング(越境する家庭形成、GHH)を、社会科学の分析対象として確立することを目的としている。「ハウルホールド=家庭」は概念的に血縁家族よりも広く、その射程に、国境を越える家事手伝い、介護士、乳母、オーペア、国際養子縁組・結婚などを収めている。本研究では、先進国内で男女平等化と少子高齢化が進行する時代において、ケア労働の担い手が国際化し、それを介して「家庭」が国境横断的に形成される現象を取り扱ってきた。そのことで、一方でグローバル化や国際関係の研究を進化させ、他方でジェンダーやエスニシティ、福祉や労働の研究との接合を図ってきた。とりわけ本年度は、まず第1に、夏までにケア労働者の受け入れ国の現地調査を引き続き行った。地中海諸国の移民労働受け入れ主要国であるフランス、またその研究の拠点であるパリ政治学院を足場とし、ヨーロッパにおけるケア労働者の受け入れ状況を現地調査した。第2に、前年度の文献のサーヴェイをもとに、口頭で英文の研究発表を試みた。とくに、ベルギー・ルーバン大学では、本テーマに関連したワークショップを開催し、発表を試みた。第3に、ケア労働の国際化や移民に関する研究会を組織し、積極的にネットワーク構築に努めた。とくに、移民・市民権研究の第1人者であるC・ヨプケ教授(パリ・アメリカン大学)と協力し、研究交流を積み重ねた。関連して第4に、ヨプケ教授の市民権に関する関連論考の翻訳をほぼ終えた。最終度である来年度中の出版が岩波書店からなされる。これにより、市民権を含めた関連トピックに研究が広がり、また今後の理論的研究の素地を固めたといえよう。
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