2009 Fiscal Year Annual Research Report
市場および経済システムの内生的レジーム・シフト――戦略操作と持続可能性の観点から
Project/Area Number |
21653015
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 弾 The University of Tokyo, 社会科学研究科, 教授 (30345110)
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Keywords | ミクロ経済学 / 所有と経営の分離 / 主権 / 社会契約 |
Research Abstract |
所謂「市場の失敗」は、市場取引の外部性や情報の非対称性などに起因する、と一般に信じられている。而るに、外部性や非対称情報の存在するような市場が必ずしも失敗するとも限らなければ、その逆も必ずしも真でない。言い換えれば、市場など経済的諸システムの不完全性の出所として、「外部性」「不完備情報」だけでは不十分であり、政策提言やメカニズム・デザイン等への応用可能性にも限界がある。 「外部性」「不完備情報」が個々の経済主体の行動と意思決定に関する性質とすれば、strategy proofnessは市場などシステム全体の構造的性質と言えよう。専ら前者に照準を当てたPigou以来の政策論を車の一輪とするなら、本課題ではそれを補完する他の一輪であるところの後者を扱ったメカニズム・デザインとしての政策論を、安定的でsustainableなシステムとは何か、という一般的かつ応用可能な形で確立する。 特に初(平成21)年度には、経済主体相互間ゲームとしての市場および取引システムのstrategy proofnessに関する問題を直裁に内包すると考えられる(1)市場における主体間の戦略的相互依存、(2)前項((1))の通時動学的敷術としての戦略的投資、(3)戦略的情報獲得、information sharing、の各観点につき、既存の識見の単純継承に留まらず、それらの批判的止揚を試みた。文字通り萌芽段階の研究であり、現(平成21年度末)時点では完成成果の発表等は見ていないが、現今の経済情勢下で最も時事性の高いと思われる(a)経済的格差・分配の不平等、(b)研究開発・知財権保護、(c)継続的取引関係と価格支配力、(d)地域統合と人口動態、といったトピックに関連し、簡単な部分均衡モデルに拠りつつも、既存文献では充分に解明されていなかった幾つかの問題点を彫り出し、それらが単純な所謂「外部(不)経済」や「非対称(不完全・不完備)情報」だけでは論じられない事が判明した。(それでは正しくはどう論ずるべきか、について研究代表者自身が未だ盤石の理解に到っておらず、目下検討中である。)
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