2011 Fiscal Year Annual Research Report
企業家精神の国際比較:構造方程式モデルによる経済発展プロセスの定量的解明
Project/Area Number |
21653024
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Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
小井川 広志 長崎県立大学, 国際情報学部, 教授 (50247615)
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Keywords | 企業家精神 / 構造方程式モデル / 経済発展 / 多国籍企業 / 地場サプライヤー / 東アジア / 電機・電子産業 |
Research Abstract |
本研究では、地場企業の生成・発展について、現地調査を基にそのメカニズムの体系化を試みた。電機・電子産業多国籍企業のサプライヤーとして操業しているマレーシア地場企業43社に行ったインタビュー調査の結果、地場企業の生成・発展を段階的に捉えることが適切であると理解し、プロセス・アプローチによってこれを定式化した。 プロセスは、(i)Back Ground,(ii)Work Experience,(iii)Nascent Process,(iv)Start-up,(v)Developmentの5段階からなる。多国籍企業サプライヤーの出現を説明する上で、この5段階はいずれも重要であるが、特に決定的な段階は(ii)Work Experienceである。多国籍企業内部での就業経験、あるいは顧客、サブコントラクターとして多国籍企業と取引関係を有する企業での就業経験が、後に成功裏に多国籍企業とのビジネス関係を構築する上で重要であることが明らかにされた。多国籍企業と関連した就業経験は、(1)先進的技術の移転、(2)機会認識、(3)ネットワーク構築などの側面で、地場企業に創業機会とその後の発展の可能性を高める効果がある。逆に、創業以前に国内市場向け生産に特化した企業での就業経験しか持たない地場企業は、多国籍企業サプライヤーとしての発展の機会が著しく制限されることが示された。 これらの知見から得られる教訓として、地場企業の生成・発展の前提条件としての多国籍企業の事前のコミットメントがある。多国籍企業の進出が受入地域にスピルオーバー効果をもたらすことによってその契機が作られるのであり、地場企業はこの影響を受けて多国籍企業サプライヤーに成長する。したがって、多国籍企業の進出と地場企業とのGVC形成には、一般にタイムラグが生じることになる。
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