2010 Fiscal Year Annual Research Report
常態向上型サービスにおける“育てる消費"促進のマーケティング戦略に関する研究
Project/Area Number |
21653034
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
藤村 和宏 香川大学, 経済学部, 教授 (60229036)
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Keywords | 伝統芸能 / 神楽 / マーケティング |
Research Abstract |
平成22年度は、西欧の伝統文化に属する劇場型エンターテイメント(オーケストラ、オペラ、ミュージカルなど)の歴史と現状について文献レビューを行うとともに、ロンドンでそれらの劇場及び観客の観察調査を行った。その結果、それらの鑑賞は日常的な楽しみとして受け入れられており(劇場内で飲酒も行われる一方で、正装が基本であったが)、伝統的エンターテイメントと顧客との距離感が日本とは異なることが推察された。 また、島根県等において神楽が劇場型エンターテイメント化し、変容しながら市場を拡大し、さらに地域活性化にも活用されていることから、島根県の石見神楽と出雲神楽についてヒアリング調査と観察調査を実施した。その結果、伝統的な型を継承している出雲神楽では後継者問題に悩んでいる一方で、顧客志向的にパフォーマンスの革新を行っている石見神楽では観客や舞う機会が増加しているだけでなく、後継者も育成されていることが明らかになった。つまり、石見神楽では、パフォーマンスの革新を通じて観客の増加と後継者の育成が同時に図られており、そのことがまたパフォーマンスを革新するという好循環が形成されていた。なお、パフォーマンスの革新には、石見地方の石州和紙を用いて軽量の神楽面や蛇が作られたことも大きく関わっていた。このことから、"育てる消費"の促進には、伝統的エンターテイメントのパフォーマンスも顧客志向的に革新することで、顧客の関心を高めることも重要であることが推察された。また同時に、伝統的な型を継承しているパフォーマンスが存在することによって、革新的なパフォーマンスが評価されて観客を増加させ、逆にまた、革新的なパフォーマンスが生まれることによって、伝統的な型を継承しているパフォーマンスの存在意義が高まり、観客が増加していることから、両者を維持することが"育てる消費"の促進には必要不可欠であることが推察された。
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