2011 Fiscal Year Annual Research Report
常態向上型サービスにおける“育てる消費"促進のマーケティング戦略に関する研究
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21653034
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
藤村 和宏 香川大学, 経済学部, 教授 (60229036)
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Keywords | 伝統芸能 / 神楽 / 積層型セグメント / 顧客育成 |
Research Abstract |
日本の伝統的芸能である神楽を中心に"育てる消費"のマーケティング戦略について実証的に研究を行った。研究対象とした神楽は、出雲神楽、石見神楽、隠岐神楽、高千穂神楽、霜月まつり(湯立神楽)などであり、これらの変容と市場拡大を比較検討することで、多くの知見を得ることができた。 伝統的芸能としての神楽の継承には、その継承者の育成ともに、エンターテイメントとしてそれを受容することを通じて資金的援助を行う顧客(市場)の育成も必要とされるが、これらにもマーケティングの基本戦略であるマーケット・セグメンテーション戦略と差別化戦略が有効であることが推測された。ただし、マーケット・セグメンテーション戦略におけるセグメント化では、従来のように市場を区分するのではなく、地図の等高線のような積層構造として捉える必要がある。従来のセグメント化では市場のニーズは相互に独立であると捉えられているが、これは短期的なスパンで市場を観察した場合であり、育てるという長期的なスパンで市場を見た場合には、ニーズは相互に独立的ではなく、積層構造になっており、顧客(市場)は適切に育成されることによって、彼らのニーズは山を登るように高度化していくと捉える必要がある。したがって、継承者と顧客は同じ市場において育成され、神楽に関心を持つ段階までは同じであり、次の段階においてそれぞれの方向性(登る山)に応じて異なる施策が必要とされることになる。また、差別化戦略については、ある地域の神楽において市場志向的に変革が行われることによって、それの魅力が高まるだけでなく、伝統的なものを維持している神楽の価値も高まることが明らかになった。すなわち、変革された神楽との比較で伝統的なものが維持されている神楽の価値が再発見され、価値が高まることがあるので、伝統的なものを維持することも差別化戦略として重要であることが明らかになった。
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