Research Abstract |
本年度は,研究計画書の内容に従って,特に,少子高齢化を見据えた小売業のネットスーパーの現状について調査,分析を試みた.調査は,ネットスーパーが開始された2000年以降を対象として,論文・新聞・雑誌等のデータベースを検索して行った.その結果,西友,イトーヨーカ堂,イオンを始めとする大規模都市型中心の小売業では,実店舗の補完的サービスとして小規模に展開することから始め,中には,ネットスーパーそのものを事業として位置付けていく方向性が見出された.その際には,取扱件数拡大を目的として,たとえば,店舗にある商品をピッキングして配送するやり方から,複数の店舗に共通の倉庫でピッキングを行って対応するようなサプライチェーンの再構築が検討されている点が明らかとなった.また,国分,伊藤忠食品といった卸売業や,日通,ヤマトHDといった物流企業もネットスーパーに参入している状況が明らかとなった.さらに,三重県にあるスーパーサンシのように,利用者から注文がなくても毎週希望の曜日,時間帯に電話をかけ,安否確認などを行うネットスーパー以外のサービスも提供し,地域社会のセーフティーネット,ライフラインの役割を担いながら事業として成立させている企業が存在することも明らかとなった. 現在,多くのネットスーパーでは,平均注文数が不安定となり,その結果,物流コストが上昇して収益が確保できない状況にある.その問題を解決するには,物流貨物をいかに創造し,配送の平準化を図るかが重要であり,マーケティングの視点を取り入れた新しい物流モデルの構築が必要であることが確認できた.また,安否確認など,社会的要請に対応するべく物流の役割についての検討も必要であるとの認識に立ち,マーケティング,リスクマネジメントといった学際領域の研究動向に関する基本調査を本年度実施し,次年度以降,物流イノベーションについて検討する準備を行った。
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