Research Abstract |
平成22年においては,ネットスーパ事業等,B to Cのビジネスモデルに関する市場規模や動向を把握した.その結果,小売業における市場規模が年々拡大していることが明らかとなった.高齢化社会の到来が一つの要因としてあげられており,このようなニーズに対して,ラストワンマイルを担う物流企業の役割が重要であるが,コスト的課題によって必ずしも十分な対応ができていない現状が明らかとなった.さらに,物流企業の多くは中小零細であり,特に,大都市ではない地域においては事業継承ができず物流企業の倒産が増えていることもその理由の一つであることが分かった.このような中,三重県にある中小企業のスーパサンシでは,ネットスーパを社会性,経済性の両面から実現している数少ない事例として注目されている.本研究では,成功要因を"地域に根差した生活密着型高度配送サービス"として整理した.物流サービスは,都市部と堆域では大きな格差が生じており,今後,地域における物流サービスをスーパサンシのように高めていくことが求められる.この課題に対応するためには,地域における,卸,小売,物流企業の多段階構造を見直す必要があり,それが物流コストの削減と物流サービスの向上に繋がることになると考えられる.卸は小売に対するリテールサポートに強みがあり,小売毎にきめ細かく対応することで関係を維持している,そのため,物流企業は商品を供給するだけという位置に甘んじていた.しかし,昨今取り組まれている流通BMS(BUSINESSMESSAGE STANDARD)により,卸,小売間の取引構造が変化する可能性があり,具体的には卸と物流企業が商物分離を通してコラボレーションしたり,物流企業が卸を傘下に収めるといったサプライチェーンの構造変化に繋がり得ることが明らかとなった.本研究により,物流企業の戦略的優位性がどのような条件が整えば成立するかを検討するモデルの前提条件をある程度整理することができた.
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