2011 Fiscal Year Annual Research Report
物流イノベーションによるサプライチェーンの構造変化に関する研究
Project/Area Number |
21653035
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
竹田 賢 青山学院大学, 経営学部, 教授 (20286230)
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Keywords | 物流 / イノベーション / 事業継続性 / レジリエンシー |
Research Abstract |
本年度の研究では,どのような状況下において物流企業が戦略的優位性を実現できるかという点を中心に文献調査とヒアリング調査を実施して検討した.東日本大震災ではサプライチェーンが寸断し,大きな障害がもたらされた.そこで,事業継続性の観点から物流企業の役割をまず検討した.その際,サプライチェーン・レジリエンシーという能力を取り上げて,その強化にはサプライチェーンに冗長性と柔軟性を確保することが必要であり,拠点の多重化,拠点の能力増加,非常時の代替拠点の配置といったサプライチェーンの構造を見直すことが重要である点を整理した.しかし,この施策はコスト増に繋がるため,有事のみならず平時での物流マネジメントと併せて統合的な検討が必要である点を考察した.そのためには,少子高齢化や環境問題等の社会的課題を踏まえ,例えば,ネットスーパーや通販ビジネスといった拡大市場での貨物創造の努力が物流企業には求められ,流通BMSといったデータの標準化を前提として,物流配送情報のマイニング(データおよびテキスト),ポイントカード情報を活用した需要と在庫のコントロール,未来在庫情報の活用等の新しい視点でのマネジメントが重要との結論に達した.その上で,広島県の物流企業にヒアリング調査を実施した.その結果,物流企業の戦略的優位性を考える上で一つの示唆を与えるものとの評価が得られた反面,倉庫・運輸業ともに,ライフラインとしてまだ認められていない現状にあり,社会インフラとしての認識の醸成が重要であることも指摘された.以上から,物流企業が有事や平時における社会的課題を認識し,ライフラインとしての高い地位を確立していくプロセスの中でイノベーションが起こり,そこに物流の戦略的優位性の源泉が存在するという結論が得られた.また,物流イノベーションを検討するための数量研究に必要な要因の整理が進んだ点も成果の一つと言える.
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Research Products
(1 results)