2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21653048
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
渡邊 勉 Kwansei Gakuin University, 社会学部, 教授 (30261564)
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Keywords | ライフコース / ライフヒストリー / QDA / 系列データ分析 |
Research Abstract |
第一に、ライフヒストリーに関する既存研究のレビューを進めた。ライフヒストリー研究は、質的研究としてライフストーリー研究、量的研究としてライフコース、ライフサイクル研究が別個におこなわれており、それらについて国内外の主要な研究を集め、レビューを進めた。その際単に研究、分析の方法だけでなく、データ収集の方法についても検討を進めてきた。その作業を通じて、ライフヒストリーをできるだけ正確に聞き取ることと、人生への主観的評価、語りを聞き取ることをどのようにして両立させるかを検討した。 第二に、既存の量的データの再分析をおこなった。特に、社会階層と社会移動全国調査の職業経歴データの分析をすすめた。職歴データの縮約の方法について検討してきた。職歴データ、ライフヒストリーデータは、複雑で膨大な情報を含んでいる。そのため、いかにして情報を縮約して、ライフコースの特徴を切り出すかが最大の課題である。職歴データの具体的な分析を通じて、どのような分析、縮約が可能なのかについて、例えば分析結果の視覚的な表示方法や職歴の特徴の指標化などの分析の可能性を検討した。 第三に、上記の研究成果を踏まえ、次年度におこなう調査の実施計画について検討した。特に回答者に負担をかけない、可能な限り正確な記憶を引き出すために、ライフヒストリーカレンダー形式の質問形式の有効性と課題について検討した。さらにコンピュータ支援によるデータ収集の可能性についても検討を重ねた。 これらの検討により、ライフヒストリーの客観的世界と主観的世界をどのようにデータとして収集し、その間の関係を明らかにしていけばいいのかについて、検討を進めた。こうした作業は、従来のライフコース研究ではほとんどおこなわれておらず、質的研究を中心としたライフストーリー研究と量的研究を中心としたライフコース、ライフサイクル研究をつないでいく、重要な研究になると考えられる。
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