2009 Fiscal Year Annual Research Report
問題解決場面における社会心理学方法論拡張の可能性:個人焦点の方法論を越えて
Project/Area Number |
21653060
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
唐沢 かおり 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (50249348)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 裕幸 九州大学, 人間・環境学研究科, 教授 (50243449)
戸田山 和久 名古屋大学, 情報科学研究科, 教授 (90217513)
|
Keywords | アクションリサーチ / 研究手法 / 科学哲学 |
Research Abstract |
1.問題解決型研究の過去の貢献に関する検討 レビンのアクションリサーチに代表されるような集団研究から社会的認知研究に至る社会心理学の流れを振り返り、その中で課題解決型研究がどのように展開してきたのかを検討した。具体的には、すでに出版された文献の展望を行った上でその問題点を、各研究が依拠している社会心理学の基礎的知見・理論を参照しつつ、研究が基礎的知見の進展と問題解決に対して行った貢献は何かを考察した。 2.個人焦点の方法論の功罪の評価 上述の問題解決型・研究の展望に基づき、各研究が採用している研究手法について、「個人焦点の方法論」に依拠している程度を中心に分析を加え、基礎的知見と問題解決への貢献との関連から、個人焦点の方法論の功罪を評価し、個人焦点の方法論の基準を緩める可能性について議論した。 3.社会心理学の重層性に関する議論 上記、1、及び2の検討を通して明らかになった問題が、社会心理学の重層性、及び各層の関連付けの作業の不足である。社会心理学は、生理的反応や個人の認知、対人関係、集団、文化など、さまざまなレベルの現象をターゲットとし、また、これらさまざまなレベルで定義される変数を独立・従属変数として取り込んできた『重層的』な領域である。しかし、心理学が心の仕組みの科学であるというとき、そして、科学的説明の重要な特性が、異なる階層に属する概念間の関係を同定することであるとき、社会心理学の持つ重層性は、階層が分断されたままの未完さをもち、そのことが、単に学問としての可能性を狭くするだけではなく、実社会に存在する問題の複雑さに対応できない可能性も出てくることを議論した。
|
Research Products
(5 results)