2010 Fiscal Year Annual Research Report
「心の理論」の獲得とプラグマティックな言語理解の発達
Project/Area Number |
21653064
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
子安 増生 京都大学, 教育学研究科, 教授 (70115658)
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Keywords | 心の理論 / プラグマティックス / 形式的操 / 生涯発達 / コミュニケーション障害 / 二次的誤信念課題 / 失言課題 / 言語理解能力 |
Research Abstract |
他者理解の認知的基礎を調べる「心の理論」研究は、生涯発達研究の分野においてこの20年間ほどの間に最も進展した研究テーマのひとつである。しかし、幼児期までの研究に比べると、児童期以後の「心の理論」研究の進展は芳しいとは言えない。この領域の研究を飛躍的に推進するための一つの重要なテーマは、言語能力の発達、とりわけプラグマティックス(pragmatics;語用論)との関連性を明らかにすることである。本研究では、「心の理論」と関連する「プラグマティックな言語理解能力」の発達を測定する課題を新たに開発し、研究を進めることを目的とした。 平成22年度の研究では、青年期の心の理論を相手の心を読む「マインドリーディング」ととらえ、ロールプレイ体験がマインドリーディングの発達に及ぼす影響を検討した。大学生40名(平均年齢21.2歳、男性20名、女性20名)が実験に参加した。参加者をランダムにロールプレイ群(平均年齢20.6歳、男性10名、女性10名)とロールプレイなし群(平均年齢21.7歳、男性10名、女性10名)に分け、コンピューターディスプレイ上に表示された棚のスロットの中にあるオブジェクトを棚の反対側に立っている「店長」の注文に従ってオブジェクトに指でタッチすることが求められた。参加者からはすべてのオブジェクトが見えているが、「店長」からはいくつかのオブジェクトは見えなかった。実験の結果、ロールプレイなし群ではロールプレイ群よりも誤答が多く、反応時間が長かった。すなわち、ロールプレイ体験はマインドリーディングを活性化させることが示唆され、時系列データ解析から、その効果はしばらく続くことが示された
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