Research Abstract |
表情カテゴリー判断課題を用いた表情認知能力の測定 コミュニケーション能力に関わる認知者の性格特性を明らかにするために,表情カテゴリー判断課題実験によってコミュニケーション能力を測定し,質問紙によって性格特性を測定した。実験協力者は大学生34名であった。 表情カテゴリー判断実験では,表情写真7種類(喜び,真顔,怒り,恐れ,悲しみ,驚き,嫌悪)計173枚を80msec提示し,表情カテゴリーの判断を求めた。実験によって得られた表情判断の正誤データを用い,怒り,恐れ,悲しみ,驚き,嫌悪の表情ごとに項目反応理論によってコミュニケーション能力を測定した。項目反応モデルに適合して能力の推定に利用された刺激は怒り64枚,恐れ28枚,悲しみ27枚,驚き27枚,嫌悪6枚であった。質問紙については新性格検査(120項目),Big Five尺度(60項目),EQS(情動知能)(65項目)を上記の実験後に実施した。 上記の実験と質問紙のデータをもとにコミュニケーション能力と性格特性との相関係数を求めた。主な結果として,恐れに関しては新性格検査の共感性(.376)並びに進取性(.427), Big Fiveの開放性(.352), EQSの配慮(.352)と有意な正の相関が,嫌悪に関しては新性格検査の神経質(.375), Big Fiveの情緒不安定性(.381)と有意な正の相関が得られた。 今回の実験の結果,恐れや嫌悪において特定の性格特性との関連が明らかとなった。しかしながら,先行研究で性格特性との関連が明らかとなった怒りに関しては今回関連が見られなかった。今後実験協力者を増やし,認知者のコミュニケーション能力にかかわる要因について詳細な検討が必要である。
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