2011 Fiscal Year Annual Research Report
表情を媒体とした社会的コミュニケーション能力の測定
Project/Area Number |
21653066
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中村 知靖 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 准教授 (30251614)
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Keywords | 表情認知 / 項目反応理論 / コミュニケーション能力 / 教育系心理学 / 社会系心理学 |
Research Abstract |
集団式表情認知能力テストの開発 昨年度までの研究によって実験的な枠組みでの表情認知能力テストの開発は可能であるが分かった。しかしながら,実験的方法では個人ごとの実施となり,大規模なデータ収集は困難である。能力測定においては項目(刺激)の特徴を捉えるために,大規模なデータを収集する方が望ましい。また,実用面からも紙媒体を利用した集団式のテストの開発が望まれる。そこで今年度では,表情写真を紙媒体に刺激として配置したテストを開発した。 テストは表情刺激として喜び,怒り,悲しみ,驚きの4表情を取り上げ,これら表情と真顔との間で該当する表情の合成率が10%から100%までの10段階のモーフィング画像を作成した。表情表出者は男女それぞれ2名ずつとし,4表情×10段階×4名の160刺激をテスト項目として利用した。調査協力者は,大学生85名であった。 2パラメーターロジスティックモデルで分析し,項目パラメーターの推定精度の高い71刺激を利用して表情認知テストを構成することにした。テスト情報曲線を算出したところ,平均的な能力値である0よりも低い値で情報量のピークがきており,今回のテストは全体的に表情認知能力の低い受検者の能力の測定において精度が高いことが分かった。また,表情ごとのテスト特性曲線を求めたところ,困難度から驚きが全体的に表情の認知が簡単で,喜び,悲しみ,怒りの順にしたがって表情の認知が難しくなることが分かった。識別力については,表情ごとに大きな違いはないが,怒り刺激の識別力の平均が0.54と最も高く,それ以外の表情は0.47付近でほぼ同じ値であった。今回,4つの表情をまとめて1次元の表情認知能力テストを作成したことによって共通のものさしが作成されたことになり,表情ごとの特性の違いを議論することが可能となった。本研究の成果の一部は中村(2011)で公表されている。
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