2009 Fiscal Year Annual Research Report
読字障害児のためのイラスト漢字を用いた漢字読み習得支援プログラムの開発
Project/Area Number |
21653067
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Research Institution | Yamagata Prefectural University of Health Science |
Principal Investigator |
佐竹 真次 Yamagata Prefectural University of Health Science, 保健医療学部, 教授 (90299800)
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Keywords | 教育系心理学 / 発達障害 / 読字障害 / 漢字習得 / イラスト漢字 / 音韻処理 / 意味処理 / トレーシング練習 |
Research Abstract |
漢字の読みにおいては、音韻を処理するプロセスのみならず意味を処理するプロセスでも情報が処理されるといわれる。そのような漢字の特徴を読字障害の治療教育において最大限に活用するために、本研究は、小学校に配当された1006個の漢字すべてについて、漢字とそれに関連するイラストを重ねた「イラスト漢字」を考案・作成し(当該年度に、うち半数以上を完成している)、それを教材として読字障害をもつ子どもたちに読みの訓練を実施し、その教材と訓練法の効果を明らかにすることを目的とする。訓練では、漢字部分とイラスト部分をトレースした後にその漢字を口頭で命名し、漢字の下に読みをひらがなで書く練習を数回繰り返す。漢字の形態を見ただけでイラスト部分をイメージし、対応する表象的意味を想起してその意味に対応する音韻が喚起されることが期待される。 論文として発表したある読字障害児における結果は、漢字のみのトレーシング練習での8セッションに渡る読みの平均正答率が10.3%、「イラスト漢字」のトレーシング練習での読みの平均正答率が75.9%であった。このことは、「イラスト漢字」でトレーシング練習を行ったことのある漢字の形態を視覚的に知覚したときに、関連するイラスト部分をイメージし、対応する表象的意味が想起され、その意味に対応する音韻が喚起されやすくなる可能性を示唆した。 このような効果は臨床レベルでは経験されることがあるが、学術的研究としては確立されていない。本方法による訓練効果が明らかにされて訓練プログラムが完成すれば、読字障害の漢字読み習得の訓練法に確かな選択肢を加えるという意義が得られる。また、本研究の成果には、読字障害をもつ人の意欲や自尊感情を十分に維持しながら、漢字読みの習得を飛躍的に向上させるにあたっての重要性が存すると考えられる。
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