2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21654019
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
栄 伸一郎 九州大学, 数理学研究院, 教授 (30201362)
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Keywords | 関数方程式論 / 応用数学 / 界面方程式 / 反応拡散系 |
Research Abstract |
パルス運動に境界条件がどのような影響を与え得るかを調べるため,空間1次元問題において境界条件にパラメータを導入し,分岐論的考察を行った.元となる解として,境界条件のない全直線上における安定なパルス解を用いた場合は,境界条件に含まれるパラメータを変化させることにより,内部の解の運動を自由にコントロールすることができることがわかった.たとえば運動の向きを自由に変えたり,また内部に安定定常状態や不安定定常状態を構成したりすることなどができた.またそうした解挙動の変化をパラメータに関する依存性が明らかになるよう,分岐図式の形で表現することにも成功した.このようにまず最も単純な設定の場合に対して,ほぼ完全な形で結果をまとめることができたといえる.こうした考察を,より応用のできる場合に拡張する試みもいくつか行った.その一つは2次元領域への拡張である.境界形状が一般の場合は大変困難であるため,最初の試みとして直線上の境界条件を考察した結果,境界に近づいたり離れたりといった挙動に関しては1次元の場合とほぼ同様であることがわかった.しかしそれ以外の挙動,安定定常解のできる場所などといったことに関してはよくわかっておらず,今後の課題としたい.次に考察したのは空間1次元問題であるが,元となっている解が必ずしも全直線上で安定とは限らない場合を考察した.そのための状況として本研究課題のテーマでもある,分岐点近傍におけるパルス解を考察し,進行パルス解も扱えるようにした.これにより進行パルス解が境界条件からどのような影響を受けるのかをある程度理解できた.この結果は本来の目的である,2次元スパイラル解の運動に直接貢献するものではないが,実際のスパイラル解において,境界付近の解析を行う上で有用な情報となると期待される.以上,こうした境界の影響を考察する問題自身は,実際の実験等を考えるとき,内部の状態を容器の境界からどのように制御し得るかという点で大変意義がある.特に特定の局在パターンを境界からの制御だけで特定の場所に構成できることは応用上も重要であり,今後の理論的発展が望まれる.
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Research Products
(4 results)