2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21654019
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
栄 伸一郎 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (30201362)
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Keywords | 関数方程式 / 応用数学 / 界面方程式 / 反応拡散系 |
Research Abstract |
今年度は,細い管状領域を伝搬する波の運動を,進行速度が非常に遅いパラメータ領域において調べた.進行速度が非常に遅いという状況は,静止している波が不安定化した直後の状態であると考えられ,ピッチ・フォーク分岐点の近傍において現れることが知られている.このような状況下で平面波を界面と見なすととにより,十分幅の狭い,2次元管状領域における運動を厳密に導出することに成功した.応用として,神経軸索を十分細い管状領域と見なし,その上を伝搬する神経インパルスの運動を上記の結果を応用して解析した結果,領域の曲がり方にインパルスの運動が影響を受けること,特に曲率の変化が大きい箇所では進行速度が逆転しうることも理論的に示すことができた.これは生物学的視点から見ると,神経軸索が折りたたまれるなど,曲がっているよりはできるだけまっすぐな方がインパルスの通りがよいであろうということを示唆しており,これまでのモデル方程式や実験では全く考慮されてこなかった要素である.また,別の立場からの研究として,境界条件が内部の解に与える影響を調べた.一般に化学反応などの実験で,人為的に制御可能な項目の代表として温度や境界からの物質の注入などをあげることができる.この観点から,本研究では境界条件により内部の状態をどのように制御できるかを反応拡散型のモデル方程式を用いて考察した.具体的にはディクレ境界条件と断熱境界条件を考察し,まずそれらの境界条件により全く相反する解の運動が出現するととを示した.次に,この2つの境界条件を結ぶような1-パラメータを導入することにより,解の運動のパラメータ依存性を分岐論的観点から考察した.その結果,パラメータをコントロールすることにより,任意の場所に安定な局在パターンを構成できることなどを示すことができた.研究では線形の境界条件だけしか考えていないが,本結果は実験容器の境界からの注入量を単純に変えるだけで内部の状態をかなり自由に制御し得ることを示唆しており,さらなる応用が期待できる.
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Research Products
(8 results)