Research Abstract |
原子分解能ホログラフィーとは,X線や電子などの散乱波の位相と強度を記録することにより,物体を三次元的に撮像する手法のことを指す.中性子線ホログラフィーは,X線や電子線の散乱と異なり,核散乱においては核種によって位相が180度異なる場合がある.このような散乱の特性は,再生された原子像において,正と負のコントラストとなって現れる.これを確かめるために,我々は,原研改三号炉のHERMESを用いて高効率中性子線ホログラム測定技術を開発するとともに,水素を吸蔵させたPd単結晶に対して,高精度なホログラムデータを測定した.得られたホログラムから,PdHの水素核周辺の実空間像を再生させ,PdとHの核を各々鮮明に再生させることに成功した.さらに,Hの散乱長がマイナス,Pdの散乱長がプラスであることを反映し,実空間像におけるHの像を負に,そしてPdの像を正に再生させることにも成功した.これより,元素(核種)を区別させ再生させることに初めて成功した.また,中性子散乱のもう一つの特徴は,核(原子)散乱と磁気散乱が同程度の振幅を与えることである.そこで,次なるターゲットとして,磁気散乱によるホログラムの記録を行い,磁気モーメントを有する原子の再生を試みる.そのためには,強磁性体であるSmCo5の結晶成長が必要である.そこで,高純度のSmとCoを原子比1:5でアーク溶融法で反応させ,得られる合成物のインゴットの一部から,ブリッジマン法を用いて,アルミナタンマン管内の融液が下方から凝固するようにして単結晶化を行った.得られた内容物をX線ラウエカメラで測定した結果,一部は数mm程度の単結晶になっていることが判明した.
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