2009 Fiscal Year Annual Research Report
電気二重層トランジスタによる銅酸化物の電界誘起超伝導転移
Project/Area Number |
21654046
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
下谷 秀和 Tohoku University, 金属材料研究所, 助教 (60418613)
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Keywords | 電気二重層トランジスタ / 超伝導 / 固液界面 / FET |
Research Abstract |
銅酸化物高温超伝導体の母物質である、ネオジウム銅酸化物(Nd_2CuO_4)の薄膜を活性層に用いて電気二重層トランジスタを作製し、キャリア(電子)密度の制御を試みた。電気二重層トランジスタは、電界効果トランジスタの一種で、電解液を通してゲート電圧を印加する。電解液としては、これまで高分子電解液を用いてきたが、本研究でイオン液体を用いることにより、より高密度にキャリアを蓄積できることが分かった。そこで、イオン液体を用いてデバイスを作製したところ、n型の電界効果トランジスタ動作がみられ、Kd_2CuO_4の抵抗を連続的かつ可逆的に制御することに成功した。ゲート電圧を印加した試料の抵抗の温度依存性を測定したところ、ゲート電圧によりキャリアを蓄積すると、抵抗の温度依存性の減少が見られたが、絶縁体から金属への電子相転移は見られなかった。キャリア密度を見積もるためにホール効果測定を行ったところ、キャリアが最表面のCuO_21層に集中していると仮定すると、金属転移するのに十分なキャリア密度が蓄積されていることが分かった。実際には、試料表面から数層にキャリアが分布していると考えられるため、さらなるキャリア密度の増加が必要である。しかし、キャリア密度増加のために、より大きなゲート電圧を印加すると試料表面に不可逆的な電気化学反応を生じてしまうことが明らかとなった。以上、今年度の研究により、ネオジウム銅酸化物の電気二重層トランジスタの動作に成功し、蓄積されるキャリア密度を測定することができた。これにより、試料表面に高濃度にキャリアを蓄積できる電気二重層トランジスタの手法が銅酸化物へも適用できることが示された。また、金属・超伝導への電子相転移のためには試料表面の電気化学反応の抑制が必要であることも明らかとなった。
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